暗闇の中から
□[9]「嫌な予感」
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「手を壁にぶつけただぁ!?」
宮地と黒子の部屋に行き、隠し通すつもりが思いの外痛みが出てきてしまって手をさすると、それをめざとく見つけた宮地に怒鳴られる。
「やっぱり怒られたー!だから黙ってたのにぃ……いやほんとすみません」
高尾がぶーと頬を膨らませると宮地の頬は尚更つり上がって、高尾は慌てて謝る。
「アホが。テツヤに余計な仕事増やすんじゃねえよ」
「あー、手当ては俺がしてやるからいいっスよ黒子っち」
高尾の手の手当をするために、染み着いたマネージャー業の流れでてきぱきと動いて救急箱を持ってきた黒子に、黄瀬がそれ貸して?と笑顔を見せる。
「いえ、部活外で怪我したとしても、先輩にそんな手間かけさせるわけには」
「手間ってテッちゃん。じゃあテッちゃんがいつものように、優しく手取り足取り手当てお願いします」
「手を取るのも足を取るのもそこが怪我をした場所だからです。やっぱり黄瀬先輩、申し訳ないですがお願いします」
「はーい」
「テッちゃあああん」
黒子は黄瀬に救急箱を渡すとスタスタとキッチンに戻っていく。
黒子が黄瀬に頼んだ事は今日に限っては助かった。こんな手、黒子に見せるわけには行かない。
「いって……黄瀬、悪い。頼むわ」
「了解っス」
「おい」
一連の流れを見ていた宮地が、隠すようにしている高尾の手を覗きこむ。
「本当は何があった」
「別に何も、」
「テツヤに余計な心配かけたくねえって気持ちがあるんなら、正直に話せ」
どうやら宮地は、何かあった事に薄々気付いているようだった。黄瀬も知っている事も。
「……実はここの近くで、テッちゃんの元彼に会って」
隠すと、後で何らかの形でバレた時怒られそうなので、全部正直に話した。
倉井と話した内容、黒子は絶対に連れて来ないと言ったら手を潰されそうになった事、それを助けてくれたのが黄瀬である事も。
「さっきも、ああやって過剰に甘える仕草を見せればテッちゃんはきっと黄瀬に任せるだろうなって予想出来たから。……ドンピシャに当たってたのはちょい複雑だけど、助かりました」
話している内に、黄瀬は慣れたように手当をしクルクルと軽く包帯を巻く。
「黄瀬、包帯は大げさ」
「湿布だけだとついつい左手使うでしょ。せめて丸一日は使っちゃダメっスよ」
「ええー」
「火曜日練習試合なんだろ。それまでに気合いで直しやがれ」