黒受け
□もしも黒子が秀徳に行っていたら。〜初めての特別です〜
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これはまだ中学2年の頃の話。
「赤司君、ちょっといいですか?」
伺う声は黒子のもので、赤司は練習試合の日程を確認していた緑間と同時に顔を上げた。
緑間は、手に今日のラッキーアイテムなのだろうプレゼントなどで使うリボンテープをロールの状態で持っている。
「うんいいよ、どうしたの?」
赤司は柔らかく笑みを見せるが。
「あの、恋人を誘惑するにはどうすればいいですか?」
愛らしく微笑んだ口からとんでもないぶっ飛び発言が飛び出して、一瞬さすがの赤司も固まった。
だがすぐに平静を取り戻し、こほんと咳払いをした。
緑間は顔を上げた姿勢のまま、完全に固まってしまっている。
「どうしたの、突然」
「明後日は、とても大切な日なんです。……その日に、思い切って誘惑してみようと思うんです」
いつもは無表情と言われるほど感情を表に出さない頬を赤らめる黒子に、赤司は少し前に聞いていた話をすぐに思い出す。
黄瀬が黒子っちに彼氏がいるなんて俺まだ認めてないっスからねと口走り黒子の不興を買った、しつこいくらいに何度も聞いた話。
「……そうか。明後日は彼氏の16歳の誕生日だね」
「覚えててくれたんですか」
「あれだけ熱弁されたらね。テツヤは本当に、彼の事が好きなんだね」
「はい、清志君は世界一大好きなボクの彼氏です!」
グッと拳を握りしめる黒子の目はキラキラしていて、赤司は「可愛いなぁ」と漏らす。
「相談に乗ってあげたいのは山々だけどテツヤ、ボクはどうもそっち方面には疎くてね。学校で習う勉強や帝王学なら教えてあげられるんだけど」
「そうなんですか……」
途端にシュンとする黒子の頭を赤司は優しく撫でて。
「そういう事は灰崎か涼太を捕まえて聞くといい、慣れているだろうからね」
「分かりましたそうします、ありがとうございます」
黒子はぺこりと頭を下げると、ぱたぱたと教室を出て行った。
そして。
「という訳なので教えてください、女の人からどんな風に誘惑されたらムラムラっとしますか?」
「何で俺だよ。リョータに聞けよ」
黒子が捕まえたのは、灰崎。
「黄瀬君は今日は仕事でお休みだそうなので。それに、この手の相談を黄瀬君にするとめんど……彼の様子がおかしくなるので、出来れば黄瀬君にはしたくないんです」
「ごまかしきれてねえぞ。今、めんどくせえって言おうとしただろお前」