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□オチるわけにはいかない
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「テツヤ、僕達付き合おうか」
赤司が黒子への告白を始めたのは、3年に上がってすぐの頃だった。
静かな図書室。お互いよく本を読む者同士、何の前触れもなく突拍子に。
「……は?」
「僕はお前が好きだ。お前も僕が好きだ。付き合わない理由がない」
「何ですその根拠のない自信。丁重にお断りさせていただきます」
「何故だ」
「ボク達同性です」
「僕は気にしない」
「ボクは気にします」
「大切にするよ」
「現状特に不便はないので改めて言います、丁重にお断りさせていただきます」
「断言しよう、お前はすぐにボクにオチる」
「断言しましょう、ボクは絶対にオチません」
「強情だな」
「そっちこそ。そんな世迷い事を言うのは黄瀬君だけで十分です」
ここは図書室。弁えている2人の話し声はヒソヒソ声だけれど、近くに座っている生徒には話の内容まではっきり聞こえている。
けれど、話している人物の片方がこの帝光を陰で牛耳っているともっぱらの噂の帝王赤司ともなれば、誰に注意出来るはずもなくただただ無我の境地で聞かないフリをしていた。
それからと言うもの、赤司はまさに息をするより簡単に黒子に好きだと言い続けた。
話し合いの結果、高校は皆別々の学校に進学し公式戦で戦おうと決めた時も。
「テツヤは僕と同じところに来るだろう?」
「行きません」
「何言ってんスか赤司っち、黒子っちは俺と同じとこ行くんスよ、ねー?」
「そんな血迷った約束した覚えはありません」
「おめーも何言ってやがんだ、テツは俺の相棒なんだから俺と同じとこ行くんだよ」
「さっき「皆違う学校に行こう」と話し合った事、もう忘れたんですか」
「俺、黒ちんとなら同じ学校行ってもいいよー」
「君はもう少し人の話を聞いてください」
「俺と同じところに行くならば、俺がお前の相棒になってやらんでもないのだよ」
「ボクなんかより君とうまく付き合えるコミュニケーション能力の高い相棒が出来ますよきっと」
相変わらずフリーダムなキセキの皆に一々ツッコミを入れる黒子も、律儀である。
中学最後の全中、黒子は直前の試合で負傷し荻原との約束は果たせなかったけれど、赤司は黒子との約束を守って全力で戦ってくれた。
結果荻原達は惨敗してしまったけれど、荻原が「悔しくて超泣いたけど、本気で戦ってくれたのが嬉しかった」と泣きながらも笑ったのが印象的だった。