for you
□天使の笑顔と愛情の代償
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高尾が黒子の恋人だとバレて合宿が終わり、気付けば冬休みも残り2日。
休みが明ければ今度は新人戦に向けての本格的な練習が始まるから、それまでにゆっくりデートをしようと約束をして。
「今から出れば待ち合わせ時間の10分前には着くか。よし、タイミングばっちり」
財布に携帯、忘れ物がないか確認して家を出ると。
「あらおはよう高尾ちゃん、今日もイケメンね!……あん、もう、避けられちゃった」
自分より12センチ高いオネエに抱きつかれそうになった(直前で避けたが)。
「……何でここにいるんすか実渕さん」
「やだ玲央って呼んでよ。どうしてって、休み明けまで全校部活はないって合宿終わりに言ってたじゃない?だから、京都に帰る前に高尾ちゃんとデートしようと思ったの」
「シマセン。じゃなくて、俺が聞きたいのはここにいる理由よりここの場所が分かった理由なんだけど」
「うちには征ちゃんがいるのよ。分からないわけないじゃない」
「その理屈ぜんっぜん分かんねえけど赤司の名前出されたら納得しそうになるって何これ赤司怖い」
「うふふ、混乱する姿もかっこいいのね。改めてお誘いするわ、デートしましょ?」
「こっちも改めて言います、お断りします」
「女性に恥をかかせるものじゃないわよ」
「いやあんた男だし!」
「心は女の子よ」
「知らないっすよそんな事!」
隙を見て、高尾は走って逃げ出す。
後ろは玄関だったからいったん中に入って裏口から出る事も考えたが、裏口は正月のどんちゃん騒ぎでまだ片付けきっていないゴミが山となり塞がっていた事を思い出したのだ。
「ちょっと、逃げる事ないでしょう!?」
「追いかけてくんな!」
走りながら、高尾は少し遅れるかもしれないと黒子に連絡すべく携帯を取り出した。
「ごめんテッちゃん、何でかしんねーけど、いや理由は聞いたけど理解出来ねーっつーか、とにかく家を出ようとしたら洛山の実渕さんにつかまってとうそうちゅうすこしじかんおくれるごめん」
そんなメールが高尾から届いたのが10分前。今は待ち合わせ時間ぴったり。
メールの文面を見るに、途中から変換する余裕もなくひらがなになってしまっている事からかなり混乱しているのが見て取れるが、なぜ実渕がなどとは思わない。
逆に「ああなるほど」と納得したくらいだ。と言うのも。
「遠慮はしなくていい。むしろ他の客の邪魔だから座れ」