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□もしも黒子が洛山に行っていたら。
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中学バスケ界に君臨し、無敗を誇った帝光中の「キセキの世代」。

注目された進学先には、名だたる強豪校が予測として名をあげられた。

誰もが思っていた。

彼らは同じ高校に進学し、その名を今度は高校バスケ界に君臨させるのだろうと。

誰も思うはずもなかった。

まさか、5人全員がそれぞれ違う高校に進学するなど。

ただ1人、「キセキの世代」幻の6人目と呼ばれたその存在だけは、全中三連覇達成後ぱたりと聞かなくなって以降、どこにいったのかどこに進学したのか誰も知る事はなく。

その名の通り、本当に「幻」だったんじゃないかと噂された。






そしてその噂の「幻の6人目」こと黒子は。

「……テツヤ、赤司と一緒にいられないのが不満なのは分かるが、その不機嫌面もう少しどうにかならねえか」

「無理です。元からこういう顔なので」

WC1ヶ月前現在、激烈ご立腹中だ。

理由は簡単、いつもはどこに行くにも一緒に連れていってくれる赤司が、最近は先に行って皆と自主練していろと言って監督との話し合いに向かうからだ。

しかも話し合いの内容は絶対に教えてくれない。

「何故ですか」

「俺に聞くな」

赤司が戻らない事にはどうにも直りそうもない2つ下の従兄弟の不機嫌顔に、黛は何度目か分からないため息をつく。

「よし、じゃあテツヤを元気づけるためにここは俺が一発……」

「気遣いはありがたいが葉山、テツヤのイグナイトを食らいたくなかったらちょっと黙っててくれ」

スパッと鋭い刃物で切るかのような黛の言葉に、葉山は慌てて自分の口を塞いだ。

力自慢のはずの根武谷が以前同じようにからかってイグナイトを顔面で受け、失神してしまったその威力を思い出してしまったからだ。

チーム内の紅白試合でそのイグナイトを普通のパスと変わらないように軽く受けている赤司に、更なる畏怖を感じたのはまた別の話だが。

「馬鹿ねぇ。テッちゃんにとって征ちゃんと一緒にいられない以上の不幸はないのに」

「下手な慰めはテツヤの逆鱗に触れるだけだ、あれだけはパス以外の目的で受けるもんじゃねえ」

根武谷もその時の事を思い出したのか、腕を組んでフルフルと首を振る。

「楽しそうだね。何の話をしているんだい?」

背後から聞こえた声に、黒子はぴくりと反応するものの、黛の前に立ったまま動かない。

「テツヤ、赤司が来たぞ」

「分かってます」


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