黄黒
□[7]新たな出会い、そして再会
1ページ/5ページ
「行きたくない」
「黄瀬君」
ぎゅうと抱きついてくる黄瀬に、黒子はその背中をぽむぽむと撫でる。
「夜には帰ってくるんですよね?大丈夫ですよ、ちゃんと待ってますから」
「嫌だ、俺が無理。ずっと黒子っちと一緒にいる」
「しょうがないでしょう?お仕事なんですから」
「しょうがなくなんかない。何で俺があっちの都合で黒子っちとの時間削られなきゃなんないの?意味分かんない」
朝、白宮家の玄関先で黒子に抱きついて黄瀬はいつもより砕けた口調で子供のように駄々をこねていた。
やっとの事で終わらせたはずの仕事。
その撮り終えた写真を見たクライアントがいたくそれを気に入り、別のパターンの写真も欲しいと言い出したのだ。
ギャラはもちろん上乗せするからと頼み込まれて、古い付き合いでもあるクライアントからの依頼という事もあり、黄瀬の怒涛の仕事っぷりを知っている事務所側も断るに断りきれず。
いつもなら「仕事をおろそかにしてはいけませんよ」と突っぱねる黒子も、さすがに今回はいつものように無理矢理背中を押して送り出せない。
それは赤司達他のメンバーも同じで。
「今回に関してはさすがに同情するぜ。俺なら速攻断るけどな」
「それが出来ないって、本当はきーちゃんも分かってるから難しいんじゃない。まさしく不可抗力ってやつだよね、テツ君と過ごす時間を作るために頑張った結果がこれだもん」
「追加の仕事など本当ならありがたい事なのだろうけれど、ツいてないのだよ黄瀬」
「タイミング悪いよね、黄瀬ちん可哀相。黒ちんもいつもより優しいし」
「テツヤも本当は一緒にいたいだろうけど涼太の立場を考えて諭しているんだ、時間が許す限りああさせてやろう」
赤司の言葉に、皆が同時に頷いた。
「黄瀬君」
「…………」
「黄瀬君、大丈夫ですよ。皆さんがいてくれますから」
黄瀬が駄々をこねる理由は、ただ黒子の側にいられないからというだけではない。
白宮が、いるからだ。
黄瀬に正体を見破られて引いたように見えるが、黄瀬がいないとなると次はどんな手で黒子に近づこうとするか、油断がならない。
「ボク、絶対1人にはなりませんから。むしろ、黄瀬君と同じくらい心配性の皆が1人にはさせてくれないはずです」
「それは分かってるけど、」
「大丈夫ですよ」
ぽむぽむともう一度背中を撫でて、黒子は背伸びをして黄瀬の頬にキスをする。