黄黒

□ラッキー・ハッピーデイ
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「……ええ、はい。黄瀬君がどうしても皆でと。赤司君や紫原君にまで約束を取り付けていて」

数日前に、黒子も初めて聞いたのだ。

「黒子っちの誕生日、皆で集まらない?」

誠凛優勝でWCが終わり、黒子が皆と和解した事は黄瀬にとっても嬉しかったらしく、いつか皆でゆっくり集まれたらとは初詣に行った時に言っていた。

電話の相手の桃井は、「意外だね」と言った。

『きーちゃんなら絶対「今年の黒子っちの誕生日は俺が予約っス!」くらい言いそうなのに』

確かに、去年はこの時期黒子は皆の前から姿を消し、春に黄瀬が誠凛に来るまで黄瀬とも会っていなかった。

当然、誕生日も祝ってもらう事もなく。

だからだろうか、WC前から黒子本人より黄瀬の方が黒子の誕生日を心待ちにしていた。

また皆でバスケが出来る事を、実は一番望んでいたのは黄瀬なのかもしれない。

中学時代は、黄瀬にとってたった4ヶ月だったのだ。

仲間と呼べる皆と、心の底から笑いあいバスケを楽しんでいた時間は。

『ねえところで、ストバスするってきーちゃん大丈夫なの?足』

「みたいですね。部活もしばらくは基礎練中心のメニューに抑えて、モデルの仕事もカメラの前以外では極力座らせてもらってるって言ってました。何より昨日うちに来て火神君と1on1してましたから、もう大丈夫でしょう……あ」

後ろから伸びてきた手に、携帯を奪われる。

『で、どっちが勝ったの?』

「俺に決まってるじゃないスか」

『え、あれ、いたのきーちゃん』

電話の相手が変わった事に気付いていない桃井に黄瀬が返すと、「静かだからいないかと思った」と桃井も返す。

「いましたよ。黒子っちが、電話の間は大人しくしててくださいって言うから大人しくしてたけど、もう限界。長いっス」

電話の先で膨れたのが分かったのか、桃井がおかしそうに笑った。






「黒子っち」

「んー?」

「黒子っち」

「んー……」

「黒子っち、約束遅れちゃうよ」

さらりと、黒子の髪に黄瀬の長い指が絡む。

次いでちゅっと唇に触れた温もりに、黒子はようやくぼんやりと目を開けた。

「黒子っち、お誕生日おめでと」

「う……?」

ちゅ、ちゅ、と顔中にキスをすれば、ようやく頭の冴えてきたらしい黒子がもぞりと身じろぎする。

「……もう朝ですか?」

「だから起こしたんスよー。はいはい起きて起きて」


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