11月と10月のお話

□[15]もう少し
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「いっくん、僕も離れたくないけど皆に事情説明しないと」

「いい、隼。俺達が話すから、とりあえず郁を落ち着かせろ。お前は俺達が知らない部分を補助的に話してくれ」

郁の背中をぽんぽんとなだめる隼に言ったのは始で、始が目配せをした春や新と葵も頷いて。

「少し話は長くなるが、順を追って説明する。……郁が突然隼にあんな事を言ったのは、ある男に会ってしまったのが事の発端だった」



話が進むに連れての、皆の反応は様々だった。

涙と駆と恋は郁の健気さに泣き出し。

陽は何も気付かずに郁や隼を避けた自分に腹立たしげに歯を噛みしめて壁を殴り。

夜はそんな陽の肩に顔を埋め。

中でも一番衝撃を受けたのだろう、年長の中で唯一何も知らなかった海は。

郁が何度聞いても理由を言わなかったのは自分達を守るためだった事を知り顔を青ざめさせて、隼の行動が最初からすべて郁を思っての「演技」だったのだと知ってからは頭を抱えるようにしてうつむき、話が終わるまで上げなかった。

「――黒月さんと月城さんには、今携帯を通じて皆とリアルタイムで話を聞いてもらってる。……こういう事なんですけど、分かりましたか」

始が問いかけた電話の向こう。

『よーく分かった。その野郎が』

「とんでもねえ最低男だって事がな」

「黒月さん、そんな男に最低なんて言うのは最低という言葉に失礼ですよ」

どうやらもう着いていたらしく、黒月はスマホを壊さんばかりに、月城は笑顔でありながらも見た目にそうだと分かるくらいに怒りくるっていた。

「で、これからどうすんだ。……例の件、社長からは「隼に一任する」との言葉をもらっているが」

「そう?良かった」

「例の件……?」

言葉を発したのは、完全に緊張が解けたのか隼の腕の中で話を聞いているのかいないのかぼんやりとした様子だった郁で、隼はそんな郁に笑いかけてあっさりと言い放った。

「あの男の企みを成就させてあげようと思う。僕らの関係を広めてもらうんだ」

「えっ」

「交際宣言のコメント発表する手間が省けたね」

「ちょ、え?ちょっと、隼さん、待ってくださいあの、」

「混乱してるいっくん可愛い」

「どさくさに紛れてキスするなー!」

「……ああ、これだ。やっぱこれだよ俺らの日常は」

キスをしてくる隼にじたばたと暴れる郁の様子に安心した声音の陽の言葉に、誰も言わなかったけれど今までのどこか殺伐とした雰囲気が払拭されて、皆一斉に頷いた。



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月城さん出せてよかった(・∀・)
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