11月と10月のお話
□[12]許せない思いを秘めて
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始と春、2人の協力者を得た事で隼は次の計画に出た。
郁に、すべて分かっているからと安心させるための計画。
同じ行動を起こすのはさすがに気が引けたけれど、「誰も聞いていない」と分かれば郁もきっと甘えてくれるだろうしその時にたくさんキスして抱きしめて、頭を撫でて名前を呼んで。
(郁……郁……いっくん、……もう少し、だから)
今日もグラビと同じ仕事の日。
メンバーのほとんどは、スタッフを使って別々の場所に不自然なく向かわせる事が出来た。
春と始も、今は控え室とは違うある場所で待機してもらっている。
控え室に残っていた涙と陽もうまく控え室から出して。
「寝てるいっくんだけ残して行って大丈夫かな」
「書き置き残したから大丈夫だろ。返事がなきゃスタッフが勝手に入る事もないだろうし」
空き部屋で郁が完全に1人になるのを待っていると、隼がいるとは知らずにその前を通過した涙と陽の会話が聞こえる。
(そうか、眠ってるのか。……眠れているんだね。良かった)
最近郁が眠れていないようだと、恋達が心配していた。
理由は分かっている。自惚れではなく、それは自分が側にいないからだ。
伝言を頼んだスタッフが来る前に寝顔だけでもみたいと欲が出た。
もう一ヶ月も見ていないのだ。これくらい許してもらわなければ割に合わない。
一歩踏み出そうとした時、控え室に誰かが来てつい身を隠す。
ノックをする気配もなく扉を開けて入っていったのは男で、誰に見られても不自然の無いように控え室の前に立ち中の様子を伺った。
「俺はあんたからの一方的な「命令」ちゃんと聞いてやってるだろ!こんなとこまで押し掛けてくるなよ!」
「いいのそんな大声出して。俺と2人でいられるとこ見られたらやばいんじゃないの?一度はほら、春君に一緒のとこ見られちゃったわけだし?」
聞こえた郁の怒声。次いで聞こえてきた、男の声。
春に見られたと言った。
(こいつか。郁を苦しめてるのは)
怒りで、握った拳が震える。
今すぐにでも乗り込んで郁を抱きしめて、お前は誰だと怒鳴りつけてやりたくなったけど。
「……そんなに隼君が好き?」
「大好きだよ。俺は、隼さんがいなくなったら生きていけない」
「……!」
泣きそうになった。
手紙で見ただけでもらしくなく目が潤んだのに、実際言葉として聞くと心に強く流れ込んできて愛しくてしょうがない。
「俺らはあんたに楽しませるために恋人になったんじゃない……っ」