11月と10月のお話
□[9]ゲームオーバー
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しばらくすると今度はグラビの皆が到着し、やはり彼らも矢継ぎ早の質問を受けたが。
『だから外でイチャ付くのは程々にしろとあれだけ言ったんだ俺は……』
『やめておけと言わないのが始の優しいところだよねぇ』
頭を抱える始君ものほほんと笑う春君も他のメンバーも彼らの仲を認めているような会話をして、やはり事務所スタッフに囲まれるようにして中に入っていった。
「本当に、何だ、これ、」
ストラップから聞こえていた、カメラの前に出るまでの会話とはまるで違う。
「どういう事だ……そうだ、ストラップ、」
聞こうとするが、何故か何も聞こえない。
「ちっ!」
捕まるかどうか分からない、むしろ捕まらない可能性の方が高いけれど、とにかく郁君と接触しなければ。
一応メールを送ってみたけれど気付いていないのか無視されているのか、返事は来なかった。
事務所前は相変わらずの人だかり。記者達だけでなくファンの子達も来ていて、さっきより騒ぎが大きくなっている。
人知れず事務所から出るなら裏口かな、と人混みを抜けて前に見つけていた細い路地裏を抜けると。
「……!あんた……」
そこには、ちょうど事務所の中から出てきた郁君がいた。
郁君が出てきたという事は隼君や他の皆も出てくるかもしれないけど、かまっている暇はなかった。
「どういう事か、説明してくれるかな。郁君」
「どういう事って?見たまんまだよ」
「今朝までは、君と隼君の仲は冷え切ってたはずだ。隼君から別れを切り出され、受け入れるしかなかった君が恋君に抱きしめられて泣くのも聞いてる」
俺が何を言っても、郁君はただ静かに俺を見ている。それが気にくわない。
「説明を聞く権利が俺に、説明をする義務が君にあるはずだ!」
「権利?義務?随分と偉そうな言い分だね」
ギクリとした。聞こえた声は、隼君。その後ろから、続々と他のメンバーも出てくる。
「お前らっ……」
「人の弱み掴んで監視して面白がってるような奴にお前ら呼ばわりされたくねえな」
郁君をかばうようにして俺を睨みつけてくるのは海君で、その後ろでは隼君が郁君を抱き寄せている。
隼君から感じる雰囲気は、郁君に向けている優しさとはかけ離れた、殺気にも似た感情。
「何で監視の事まで知って……誰にも言ってないんじゃなかったのかよ」
「…………」
「……っ、約束が違う!!」
「約束?何の」
声を荒げる俺に答えたのは隼君でも郁君でも海君でもなく、春君。