11月と10月のお話

□[7]絆されたわけじゃない
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「ねぇ春さん、葵さんと新どこ行ったんですか?」

聞こえた声は、恋君。

「葵が隼に用事があって寮で声かけたらこっちで聞くよって言ったけどいないらしくて、探しに行ったよ」

「始さんの姿も見えないし、リーダー同士で何か話し合いしてるんじゃないの?」

残念駆君、始君はどこにいるかさすがに知らないけど、隼君はただいま郁君と一緒だよ。

「ん?じゃあ新は何でいないんですか?」との陽君の言葉に、春君が「葵と一緒に隼探し」と答える。

そんなやりとりをしている間に、始君が来て。

「始さん、隼さんと一緒じゃないんですか?」

「いや知らないな」

「えー、どこ行ったんだろ隼さん」

しっかし、カメラの前だけじゃなくプライベートでもこいつらほんと仲良しだな。

仕事場でも同じ、帰る家も同じ、よく話題が尽きないもんだ。

「隼がどうかしたのか?」

「葵が探してるらしいんだよ」

海君が返事をした事で隼君の話が終わってからも、皆でわいわいと騒いでいた。



どうやら、通信が切れた直後にギリギリで新君と葵君の助けが入ったようで。

葵君達に呼び出されたらしい始君と春君が一度控え室を出て、しばらくしてから葵君と新君が連れてきた目の腫れた郁君を見て皆驚いてたけど、仕事が終わるまでは皆には言わなかった。

寮に戻ると、皆を先に上に行かせて始君と春君が郁君を呼び止めた。

「今回の事は、皆にも話そうと思う。ここまで来るともう、黙っておく理由がない」

「俺なら大丈夫です、皆には、言わないでくださいっ……」

「そういうわけにはいかないよ。二度目だし、次はもうない、とは言い切れないからね」

「春の言う通りだ。皆が知っていれば、次に何かあった時お前を守ってやれるだろう」

「でもっ……」

郁君の言葉は、そこで止まった。

始君も春君も隼君に対してこんな厳しい事を言うのだ、頼みは聞いてもらえないと察したのだろう。

マネージャー2人と社長には黙っててもらうよう、それだけは約束を取り付けていた。

話を聞いて、皆絶句していた。

「何ですぐに言わなかったんだよ、郁っ……」

「郁のやってる事はまだはっきり言って理解できないけど、さすがにやりすぎだろ……」

それまでは郁君を避け気味だった陽君や海君も黙っていなくて。

もしそこに携帯がなければ、郁君は場の雰囲気に飲まれて本当の事を話していただろう。

こんな状況になってもなお、携帯がそこにある以上隼君を傷つけられる事を恐れている郁君が話すはずもないけれど。


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