11月と10月のお話
□[7]絆されたわけじゃない
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「何、感じた?相変わらず敏感だね、郁」
隼君はくすくす笑って。
「おろ、してっ……」
「はい暴れない暴れない。どうせ僕からは逃げられないんだから」
「んっ……」
くぐもる郁君の声。……あー、マタデスカ。
「僕から離れてからさ」
ごそ、と間近で音がする。
「大切に持ってるよね、これ。誰にもらったの」
音が突然クリアになる。どうやら、お守り―マイクが仕込んである―は完全に隼君の手中にあるようだ。
あーあ、とうとう見つかっちゃったね、郁君。
「返してくださいっ!」
何とかお守りを返してもらおうと散々暴れる郁君に業を煮やしたのか、小さく「ちっ」と舌打ちするのが聞こえる。
「言う事聞かないと縛っちゃうよ?抵抗しないなら優しくしてあげようと思ったけど……止めた」
「やっ……っ……ぁ……っ!」
流されまいと必死に抵抗する郁君。だろうな、ここで快楽に身を任せたらどうなるか分かってるからな。
「というかさ、……やっぱり気にいらないね、これ」
「だめっ……!隼さん、だめっ……お願い返して、それだけはっ……」
「うるさいな」
「んぅ……!」
「こんなものいらないよね?お守り持っておきたいなら、僕が買ってあげるから。他の男からもらったのなんて、身につけないでよ」
「返してくださっ……」
「嫌。とりあえず、これは廃棄処分ね」
(…………!!)
突然、耳を塞ぎたくなるようなノイズ音。
「嘘……嘘!だめ、これがないと……っ!」
そして声は、そんな郁君の叫びを最後に聞こえなくなった。
「壊されちゃったかな」
けれど、2人の仲はもう今まで通りとは行かないだろう。
離れようとする郁君に愛情以上の狂気を持った隼君に、いまさら本当の事を話したとしてもまともに聞くとは思えない。
この後の展開が非常に気になるけど。
まぁいい、「ストラップ」のほうはまだ生きてんだ。
「あれ?いっくんがいない……」
ん?これは涙君の声か。ああそうか、郁君の呼び出された事は知らないんだから戻ってくる時間はあるのか。
「トイレにでも行ってるんじゃねえの。それよりあの伝言何だよ。確認したい事とか何もなかったじゃねえか」
不満を口にするのは……陽君か。何だそっちも嘘だったのか、隼君の仕業だろうな。
「まぁまぁ落ち着けよ陽。よかったじゃん、もう少しゆっくりする時間出来ただけでも」
なだめるのは海君。
「だね。でもほんと誰だろ。あのスタッフさんも、人づてに聞いたことみたいだし」
夜君も不思議そうに言う。