another story
□通常黄黒の黒子がもしもシリーズの世界に遊びに来たよ。
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「……そう、見え、ますか」
「そうとしか見えねえよ。だってお前今、この世界のお前が黄瀬の事話す時と同じ顔してる」
「……、……」
黒子が何も言い返せずにいると、笠松は余計におかしそうに笑った後、気遣うような表情になってポンポンと黒子の頭を撫でた。
「黄瀬が気付いたか気付かなかったか。ただそれだけでこんなにも違う自分がいるなんて、思ってなかったんじゃないか?」
笠松はそう言ったけれど。
「それだけ」なんかじゃない。
それは大きな事だ。
なぜあの時気付いてくれなかったんですかと、自分の世界の黄瀬に今更言うつもりはない。
あの綺麗な顔が泣きそうに歪むのは、もう見たくないから。
「というわけで、ちょっとした罰ゲーム感覚でした」
結局3日ほど入れ替わっていた後、朝になり目が覚めるといつの間にか元に戻っていた。
黒子が元に戻ったんだとすぐに気付いたのは、寝る前はいなかった黄瀬に腕枕されていて、場所が黄瀬の部屋だったからだ。
「黄瀬君、向こうの世界のボクに何もしませんでしたよね?」
「何もしてないっスよ!……俺が何も言わなくても俺にひっつきたがる黒子っちは可愛かったけど、普段からデレられ慣れてないからちょっと困ったっス」
「困った?」
「理性との戦いが大変で」
「そうですか。向こうの黄瀬君はだいぶ大人っぽかったですよ。かっこよかったです」
「浮気……!」
「違います。どっちにしろ君です」
「尚悪いっス!だって俺じゃない「俺」なんて、ある意味一番厄介な「敵」じゃん!」
ムキーッ!と唸って、この黒子っちは俺のなの!と半泣きで抱きついてくる。
『俺じゃない「俺」なんて、ある意味一番厄介な「敵」じゃん』
同じ顔、同じ声、同じセリフでも、表情や感情が違えばこんなにも印象が変わるものか。
「やっぱりボクにはこの黄瀬君がちょうどいいです」
「ん?黒子っち、何か言った?」
「何でもないです。はいはい黄瀬君、我慢し切れたご褒美として今日は甘やかしてあげますよ」
ポンポンと背中を撫でてやったら、黄瀬がふにゃんと表情を崩したのが気配で分かって、少し笑った。
「あ、そうだ黒子っち。向こうの黒子っちがね、黒子っち宛てにメッセージ残したから、未送信メール見てほしいって」
「ボクからボクにですか。何だか変な感じですね」
黒子が携帯を開くと、いつもなら興味津々に覗きこんでくる黄瀬は、黒子の肩に顔を伏せた。