another story
□通常黄黒の黒子がもしもシリーズの世界に遊びに来たよ。
5ページ/7ページ
皆というのは部員ではなく、練習を見に来ているたくさんの女の子達。
黄瀬のファンだけでなく、何かにつけて黄瀬にひっつく黒子が可愛いという彼女達は、全員黄瀬ファンから転じた黒子の女友達なのだと教えてくれたのは里内だ。
「はい、到着」
優しい手つきで壁にもたれさせてくれて、隣に座る。
黄瀬は、皆が不自然に思わない程度ではあるが黒子に必要以上に触れない。
最初は、普段からあまり黄瀬とのスキンシップを進んでする方ではない自分に気を使ってくれているのかと思ったが、どうやら少し違うらしい。
黄瀬に言わせると「いつもみたいに触ってたら、俺の黒子っちの感触忘れちゃうっス」らしい。どこまでもこの世界の黄瀬はあらゆる意味で「黒子一筋」だ。
「おう黄瀬、体力余ってんなら早川のリバウンドの相手してやれ」
「えー、俺黒子っちの隣に……わーったっスよ!」
笠松が無言でスッと足をあげると、蹴られるのは勘弁っス、と黄瀬が立ち上がる。
「じゃあ黒子っち、行ってくるね」
「……はい」
また優しく頭を撫でられた。
「…………」
「随分戸惑っているようだが」
名前を呼ばれはしなかったが、自分に話しかけているのだと気付いて、黒子はコートに向かう黄瀬の背中を見ている笠松を見上げる。
「そんなにお前の知る黄瀬とは違うか」
「……全然、違います。まるで別人です」
多少間を空けて言うと、笠松は黄瀬と早川が1on1を始めたのを確認して黒子に視線を落とし、黒子の隣に腰を下ろす。
「最初は、少し似てるところがあるような気がしてました。でも、違う。ボクの知る黄瀬君は、もっと子供で、もっと……明るく笑います」
「明るく、か」
「いつも騒がしいし、ボクを見ると見境なく飛びついてくるし、大声で名前を呼びやがりますからボクまで目立ってしまいますし、すぐキスしたがるし、ちょっとお馬鹿ですし」
『黒子っちー!』
「黄瀬」は近くにいるはずなのに、黄瀬のあの笑顔が見たい、と思ってしまう。
「……黄瀬君は、ボクを傷つける事、ボクがいなくなる事をひどく怖がっています。後者はボクのせいですが、……彼の言う事する事でボクが傷つくなんて、もうないのに」
「ぶはっ」
「何ですか」
真剣な話をしているのに笑われて、黒子は笠松を少し怪訝そうに見る。
「悪い悪い、いや、安心した。お前さ、この世界のお前と違って黄瀬を「もっと落ち着いてほしい」だの「人目を気にしてほしい」だのとか、今もだけど、マイナスな事しか言ってなかったけど、ちゃんと好きなんだな。あいつの事」