another story
□もしもシリーズの黒子が通常黄黒の世界に遊びに来たよ。
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「なるほど。要するに、全力で警戒されてるんだな……」
しくしく、と顔を覆って泣く黄瀬が少し可哀想になってきた。
「なあそういやさ、向こうの黒子がこっちに来てるって事は、こっちの黒子は向こうにいるって事か?」
「そうだ!ちょっ、向こうの俺、俺の黒子っちに変な事したら許さないっスからねー!」
黒子が寝ているから控えめに、天を仰いで黄瀬は叫んだ。
「……ってな事で、この黒子っちにしてみれば誠凛より海常の方が「ホーム」らしくてしっくりくるとかで、しばらく部活だけはうちで参加させる事になったっスから」
「アホな事言ってねえで返してこい。……って言いてえけど、確かにその黒子は俺らの知る黒子じゃねえな」
事情を聞いた上での笠松の視線の先は、繋がれた黄瀬と黒子の手。
どうやら手を繋いで歩く事は多々あるとかで、黒子から「手、繋いでいいですか?」と聞いてきたらしく、黄瀬がそれを断るはずもなく誠凛からここまではほぼ離さずに繋いできたらしい。
笠松達はよく黒子の事は分からないが、黄瀬よりは物の分別や常識は持っていると評価しているので、なるほど確かに「あの黒子」ではないと納得させられる。
それに、視線を上に移すと何故か落ち込んでいる黒子。落ち込んでいると言うより。
「何で黒子はそんな悲痛そうな顔してんだ」
「いやそれが……こっちの黒子っちのロッカーの中がどこにでもあるような全く普通でシンプルだった上、携帯に俺の写真がほとんど入ってないのがショックだったらしくて」
「は?」
「あっちの世界では、黒子っちのロッカーは俺のグッズで埋め尽くされてるし、俺が仕事の時は暇を見つけてはメールする度に自撮りの写メ添付が当たり前らしいんス。俺も黒子っちも、お互いの携帯にはお互いの画像がフォルダいっぱいでメモリーカード買ったらしいスから。写真と動画とメール保存するために」
「……黒子」
「はい、何ですか笠松せんぱ……あ、すみません……笠松さん」
「いや、呼び慣れた呼び方で構わねえよ。それより、お前背番号何番だ」
「11番です」
「ああ、そこは変わらないんだな。でもあれだ、うちにはうちの11番がいるからお前は……」
「黄瀬君に聞いてます、明日練習試合なんですよね。大丈夫です。こちらのボクは誠凛の生徒なので、試合に出して欲しいなんて言いません。ただひたすらに黄瀬君を応援するだけです」