another story

□もしもシリーズの黒子が通常黄黒の世界に遊びに来たよ。
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一旦言葉を止めた黒子が、次の瞬間ぶわっと目を潤ませ、誠凛の皆はびくうっ!と肩を震わせ、黄瀬もつられて肩を震わせる。

「何より黄瀬君に「黒子っちください」って言われて丁重にお断りするなんて、何というもったいない事をこの世界のボクは……!」

「黄瀬」

日向に名前を呼ばれて顔を向けると、何とかしてくれとばかりに手を合わせて頭を下げていて、他のメンバーも火神ですら「すまん、頼む」とジェスチャーで示している。

「黒子っち」

ひとまず泣きやませなければと黄瀬が黒子の名前を呼ぶ。

黒子が顔を上げ、黄瀬の方に体を向けると間を置かず躊躇もせずに黄瀬に抱きついた。

まるで、リコが「流麗なダンス」だと賞した氷室のシュートのような自然な流れ。

そうするのが当たり前で普通の事のように。

「ふふ、どこの世界でも黄瀬君の匂いと温かさはボクを安心させてくれますね」

「えっと、あの、く、黒子っち……?」

「ボクの黄瀬君は、いつもボクを膝にだっこして背中ぽんぽんしてくれるんですよ」

「…………」

「?……こっちの黄瀬君は、ぎゅうしてくれないんですか?」

黒子が見上げた先の黄瀬は、黒子からの滅多にないデレ攻撃に完全に固まっている。

「あれ、黄瀬君どうしました?黄瀬君?」

さっきまでの空気に戸惑っていた誠凛の皆は、黄瀬にべったりひっついたままひらひらと黄瀬の目の前で手を振る黒子の行動に我に返る。

「黒子、黒子ちょっと待て。さっきも話したが、俺達の知る黒子は人前で黄瀬にひっついたりしない。黄瀬の話では、2人きりの時でさえ滅多にないそうだ、つまり耐性がない。離れてやってくれ」

「……しょうがないですね」

さすがに黄瀬が可哀想になってきた日向の言葉に、黒子がようやく離れる。

しかしそれでも、ちょんと黄瀬の服を掴む手は離さない。

しかも表情はいたく不服そうで、それでも黄瀬君を困らせたくないから離れてあげるんですとでも声が聞こえてきそうで、あまりにも自分達の知る黒子とはかけ離れていて、あの水戸部やいつも笑って見守る木吉でさえも皆一様にクラリと眩暈がした。




「そもそも、何で違う世界の黒子っちと入れ替わる?事態になったんスか?」

しばらくすると、耐性がついたのかあるいは人目を気にせず黒子とイチャ付いていたいという願望が現実に追いついたのか、黄瀬もだいぶ落ち着いて。


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