another story
□もしもシリーズの黒子が通常黄黒の世界に遊びに来たよ。
2ページ/6ページ
「黒子君、黄瀬君とくっつきたいかもしれないけどちょっと待とうか、ほら黄瀬君どうしていいか分からなくて固まっちゃってるから」
リコの話だと、ここにいる黒子は確かに黒子なのだけれど、自分達の知る黒子ではない―――違う世界の黒子なのだと。
最初は本音を隠さない性格になってしまったのかと思ったらしい、黒子が黄瀬を好きである事は皆認知していたから。
「でもそれじゃ説明つかないのよ」
「どういう事っスか?」
「黒子君、自己紹介。黄瀬君、気になるところがあったら止めてね」
「?了解っス」
「ではいきます。黒子 テツヤです。帝光中出身で今は海常高校男子バスケ部1年で、」
「ちょっと待った。……え?黒子っち、海常って」
「はい、ボクは黄瀬君と一緒に海常に行っています。ラブラブです」
「ラブっ……」
今日の黒子は本当に表情が豊かだ。
今も、黄瀬の言葉にすぐさま反応して黄瀬を見上げ、普段ならけして口にしない事を言ってにこりと笑う。
いつもにはない反応だ。
「……えっと、ごめん。黒子っちが違う世界の黒子っちだと仮定して、その……帝光時代の、3年の時は、どう過ごしたっスか……?」
自分は間違ってしまった。
黒子は勝てば喜んでくれるんだと思いこみ、まるで遊ぶかのように相手チームを翻弄して。
結果として、黒子からバスケと笑顔を奪ってしまった。
この黒子の世界にいる自分は、あの時どうしたのだろうか。
「……誠凛の皆さんから聞きました。ボクの過ごした帝光時代と、ほぼ変わりません」
「……っ、」
「ただ「ボク」の場合は、この世界の「ボク」の帝光時代とは少し違います。皆の中でただ1人、絶望に足を取られて立ち止まってしまったボクに気付いて、ここにいるよ、大丈夫だよと、手を引き寄せ抱きしめてくれた人がいました。それが黄瀬君です」
「俺……?」
「ボクの手を引いて一緒に歩いて、側にいてくれてます。だからボクにとって黄瀬君は、世界一大切で大好きで、何を差し置いても一緒にいたいと思える存在なんです」
誠凛の皆は何も口を挟めない。
話だけは「自分達の知る黒子」に聞いて知っているとは言え、今この場にいる中でその当時の感情を共有しているのは黄瀬と「ここにいる黒子」だけだ。
「だから、話を聞いて驚きました。ボクが君とも決別していた事。違う学校に行き、中3の夏から高1の春まで一度も会わなかった事。それに何より、」