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□珍しい彼の受難
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黒子が黄瀬の家に泊まりに来るのは珍しい事ではない。
黒子が黄瀬の家に行くと、黄瀬の家族は快く迎え入れてくれる。
特に、黄瀬の姉は黒子を溺愛しているから、海常が翌日試合となると必ず家にいる。
黒子が泊まりに来る事が分かっているからだ。
「お姉さん、今晩は。お邪魔してます」
彼女は、この一言を聞くためだけに。
「はい。今日も、黄瀬君がいてくれたので1日楽しかったです」
彼女は、この笑顔を見るためだけに。
―――彼氏との約束を何度かドタキャンした事があるのだがそれは黒子は知らなくていい事なのである。
「黒子っちおいで、髪の毛洗ったげる」
「はい」
一般的な大きさの黄瀬君の家のお風呂。
標準的な体格と、標準からかけ離れた大きな体格、そんなボクと黄瀬君が一緒に入ると狭い事この上ないんですが、意識しなくても自然とくっつけるこの空間は案外好きだったりするんですが何か?
「いや、俺何も言ってねえけど」
「そうですか。でしたら先を続けます」
黄瀬君に背中を向けると、優しい手がシャンプーハットをつけてくれて、シャンプーを泡立てながら気持ちいい指先で髪の毛を柔らかく洗ってくれました。
「お客様、かゆいところはございませんかー?」
「ふふ、大丈夫です」
戯れながら髪を洗ってもらい、そのまま体も洗ってもらって。
おかしいですか?いいえボク達にとってはおかしくないです、一緒に入る時の暗黙の了解なんです。
黄瀬君は、ボクを隅から隅まで綺麗に洗い上げてくれます。自分の手でそうしないと気が済まないみたいです。
だからでしょうか。
ボクが自分の家で自分で体を洗う時、少し違和感を覚えるんです。
「え、むしろお前自分家で風呂入って寝る事あんの?」
「そりゃありますよ、ボク達は同居してるわけでも同棲してるわけでもないんですから。黄瀬君がお泊まりの仕事の時は基本的に家に帰ります。あと、長く試合がない期間にも。連休は別ですが。話、続けていいですか?」
「え?あ、お、おう」
その後は優しい手つきで黄瀬君が泡を洗い流してくれて、次はボクが黄瀬君の背中を流しました。これもいつもの事です。
髪の毛はボクの髪を洗う時にいつも一緒に洗ってしまっているのですが、きらきらの濡れ髪にムラムラしてしまって困ります……え?そんな事は知りたくなかった?そうですかすみません。