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□触れてはいけない
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欲しいものは力尽くでも何でも手に入れてきた。

モデルの仕事も、暇つぶしに始めただけ。

そんな中知り合った、まるで人に愛されるために生まれてきたような、男から見てもつい息を飲んでしまうほどの美貌を持つ男。

笑顔の似合う奴で、闇なんか似合わない奴。

そんな奴に、その綺麗な顔をさらにとろけさせて愛しげな顔をさせる存在。

「黒子っち」。

欲しいと思った。今までのように、簡単に手に入ると思った。

けれど、俺は思い知る。

けして触れてはいけないものに手を出してしまった事、そして。

「どうでもいいよ。どうせもう会わねえし」

けして怒らせてはいけない人物を怒らせてしまった事を。






新学期になり最初の連休初日。

「んー、このデザインならやっぱこの色か」

「そうっスね、こっちのが映えると思うっス」

黒子は、スタイリストが会いたがってるしモデル仲間にも紹介したいと言う黄瀬の撮影現場に、久し振りに見学に来ていた。

「……えっと、」

話しているのは、黄瀬とスタイリスト。その内容はもちろん衣装についてだが、衣装合わせをさせられているのは。

「あーでも、髪色に合わせんならこっちじゃね?」

「確かにそっちもいいっスね。黒子っち可愛いから基本的に何でも似合うし」

「はいはい、ノロケご馳走さん」

「あの、ボクより先に黄瀬君のメイクをした方が……」

黒子で。

「うんそうなんだけどね、黒子君にやっと会えた俺としてはまず君を構いたいっていうかね」

「人の恋人構うくらいならさっさと恋人作ったらどうっスか」

「んなほいほい作れたら苦労しないっての」

じゃれ合う2人(黒子視点)は今日も仲良しだ。

「おはよーございまーす、何か賑やかだな」

入ってきたのは、雑誌で見た事のある男3人。
黄瀬にもプライベートで撮った写メを見せてもらった事があるから、彼らが黄瀬の言っていたモデル仲間なのだろうと黒子は思った。

3人の顔を見比べていると、その内の1人と目が合い。

「お?何か見慣れない可愛い子がいる。新人?」

おはよー、と顔を覗きこんできた。

「お、おはようございます」

いすに座ったまま、というより座らされたまま黒子はペコリと頭を下げる。

「ね、可愛いっしょ!この子が黒子っち、俺の恋人!」

まるで宝物を見せびらかすように、黄瀬は黒子の体をいすごと反転させた。

「え、マジで!?」

「リョータ勿体ないって写真すら見せてくんねえんだもんなぁ、超可愛いじゃんほんとに男?」


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