暗闇の中から
□[1]光の世界
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気難しい印象を与えるが基本的に緑間は穏やかで、理不尽がない限り滅多な事では怒らない。
だからこそ、キレた緑間には逆らわないほうがいい事は重々承知していた。
「ええと、二軍の……」
顔と名前くらいしか知らず、あまり話した事もないような相手の友達同士での話をたまたま聞いていただけだ、自分に火の粉が降りかかる事はないだろうと判断し、高尾は素直にその面子を暴露した。
「そうか。分かった」
とりあえずその場にいて相槌を打っていただけの奴の名前も教え終わると、緑間は口元を怪しげに歪ませた。
「……何する気?」
「何だ、自分でまずは実践して欲しいと?さすが副部長なのだよ」
「違う違う!気になっただけ!」
緑間は、自分が何を言われても無頓着なのに、黒子が傷つけられるのだけは何があろうと許さない。
(一軍に上がってきたばっかの奴が、テッちゃんを小間使いみたいに部活外でもこき使って真ちゃんの逆鱗に触れて、真ちゃんがテッちゃんをほぼ無理矢理休ませてそいつにマネージャーがいかに大変な仕事か身を持って体験させた事あるんだよな……)
「触らぬ神に祟りなしと書いて触らぬ黒子に緑間の怒りなしと読む」……と誰かが言ってたけど、これは名言だと高尾は思う。
ちなみにその時の部員は、自分達が見えていないところでも働く正に縁の下の力持ちな存在のマネージャーの仕事の大変さを知り、それを文句も弱音も吐かず黙々と完璧にやり遂げる黒子を尊敬し。
それまでの非礼を詫び、それにすら「分かってもらえただけで嬉しいので、気にしてませんよ」と笑った黒子に、今ではすっかり懐いている。
さすがの緑間もそこまで好転するとは思ってなかったらしく、「まさしく棚ぼただな」と満足そうだった。
黒子が過ごしやすい環境であれば、何でもいいのだ緑間という男は。
「真ちゃんてテッちゃんの事だいぶ好きだよね」
「宮地さんから預かっている大切な存在だからな。守らない理由がないのだよ」
その後、変な噂をしていた二軍の部員は鬼のような「特別メニュー」を組まされ、緑間が直接そう言ったわけではないのに「ごめんなさいもう変な噂流したりしません」と謝ったとかなんとか。
「黒子ほど清楚でまじめな奴早々いないのに、馬鹿だなあいつら。俺は嘘だって最初から信じてたからな!」
と、きらきらした目で黒子に力説したのは、先に話した一軍部員である。