暗闇の中から

□[1]光の世界
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「ぺんぺんのすけは役に立っているか」

「はい。さっきも、高尾先輩に抱きつかれそうになったのを阻止してくれました。貸してくれてありがとうございます」

「そうか。役に立ったのなら何よりなのだよ。今日は宮地先輩が迎えに来るのか?」

「はい。よろしければ、緑間先輩もご一緒にどうですか?」

「遠慮しておこう、デートの邪魔はしたくないからな」

機嫌よく黒子の頭を撫でる緑間とぺんぺんのすけをぎゅうと抱きしめる黒子は、和やかに普通に歩き。

「ねえほんとごめんテッちゃん、謝るから俺も会話に入れて」

2人の後を騒ぎながら高尾がついて行くのは、いつもの光景なのだった。



今日の緑間のラッキーアイテムは「折りたたみ椅子」らしく、部活の始まった一角ではその椅子にぺんぺんのすけが座って存在感を主張している。

「真ちゃん教えといてよ」

「何がだ」

「ぺんぺんのすけの名付け親がテッちゃんだって。真ちゃんが付けたと思って大笑いして、テッちゃんの機嫌損ねたじゃん」

「何故お前に言う必要があるのだよ」

高尾と会話をしながらも、緑間の視線はもうすぐ休憩に入る部員のためにドリンクとタオルの用意をしている黒子の姿。

瞳は優しく、まるで弟を見守っているかのようだ。

いや実際に緑間自身黒子を弟のように思っているのだろう、おは朝信者の緑間を変な目で見ないだけでなくラッキーアイテムも快く借りてくれる上あれだけ懐かれていれば、たいていの人間は悪い気はしない。

「そういやさ、知ってる?テッちゃんによくない噂が立ってるの」

「よくない噂だと?何だ、話せ」

ピクリと片眉を上げた緑間の、手に持つペンがミシッと嫌な音を立てる。

「ほらよく宮地サンの他に、宮地サンが来れない時は黄瀬とか虹村サンとか迎え来るじゃん?だから、男を手玉に取る魔性で、四股五股くらいしてるって。真ちゃんとも仲いいし、ああ、真ちゃんには敢えて伝わらないようにしてるのかも」

「誰だ」

バキッ。

「え」

「誰が言っているのだよ、そんなふざけた事」

さっきからずっとミシリミシリと嫌な音を立てていたボールペンが、緑間の手の中で真っ二つに割れていた。

メニュー表にぱらぱらとこぼれ落ちる、ボールペンの残骸。

「えっ、ちょっ、真ちゃんタイム、ボールペン!まさかボールペン素手で折った!?」

「いいから吐け。誰が言った」

(怖いよ真ちゃん!)


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