黄黒
□そこにあったので。
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*夏休み*
はむ。
(ん……?)
夏休みも残り2日になった8月30日の朝。
気持ちのいい微睡みに身を任せていた黄瀬は、耳に触れる甘やかな感触に笑みを漏らした。
目を開けば、目の前に広がるのはいつもの水色ではなく、昨晩自分が付けた白い肌によく映える赤い痕。
「……くーろこっち、なにやってんの。おはよ」
はむはむ。
「おはようございます。ご覧の通り、黄瀬君の形のいい綺麗な耳を甘噛みしています」
はむはむはむ。
「いや、ちょ、ふは、やめて黒子っち、あはは、くすぐった、」
(ちょ、ヤバいって。反応すんじゃねえよ俺のオレ!)
黒子からの刺激には敏感に反応する正直な体に焦りながらも、その心を知ってか知らずか黒子は黄瀬の耳を含んでむにむにと口を動かす。
「ねえ、もう本当にちょっと」
はむはむはむはむ。
「こら!」
腕を引っ張れば特に抵抗もなく黒子の体はコロンとシーツに転がって、黄瀬は形勢逆転と言わんばかりに覆い被さった。
「むー、気持ちよくなかったですか?」
「気持ちよかったよ、気持ちよかったからヤバいの!」
いつにない黄瀬の焦り声に、黒子はちらりと黄瀬の下半身に視線をやって。
「おや、反応してますね」
「おやじゃないでしょ、……何キラキラした顔してるの」
「ヌくならボクがお手伝い「しなくていいから」」
不満げに膨れる頬は可愛いが、「ヌく」とかなんて聞きようによっては(いやこの場合は完全にそうだが)卑猥な言葉、黒子には言ってほしくない。
「今シたら黒子っち足腰立たなくなって、お出かけ出来なくなっちゃうっスよ。せっかく部活休みなのに、デート行きたくないの?」
「行きたいですっ」
こくこくと頷く頭に苦笑して、黄瀬はあの程度でも黒子からされていると自覚したら反応してしまうこらえ性のない自分の体を叱咤しながら先にベッドから出る。
「ん、いいお返事っス。だったら起きて先に顔洗ってて。俺トイレ行ってくるし」
「はい。……あの、黄瀬君」
「うん?……あ、」
毎朝恒例のキスを今日はまだしていない事に気付いて、ベッドに腰掛けた状態の黒子に近づき、顔を上げた黒子に腰を曲げてチュッと小さくキスをする。
「改めて、おはよ黒子っち」
「はい、おはようございます」
名前を呼んだだけで言いたい事に気付いてくれた黄瀬に嬉しげにはにかむ黒子に。
「黄瀬君、」
「言わないで黒子っち、分かってるから」