黄黒

□そこにあったので。
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(だから!少しはこらえろっての、俺!)

やっぱり余計に反応してしまった自分の正直な体に辟易して、ガクンと肩を落とした。



「ところで黒子っち、今朝何で俺の耳甘噛みしてたんスか?」

家を出て、予定していた行きつけのショップに行って色違いのお揃いのシャツを買って、店員に大人気の黒子を黄瀬がにこにこと笑顔で見守り、しばらくしてから店を出てふと話が途切れた隙に聞いてみると、黒子がきょとんと首を傾げる。

「そこに黄瀬君の耳があったからです」

「そんな、何で山に登るのかと聞かれてそこに山があったからと答える登山者みたいな返事されても」

「今日は8月30日です」

「うん」

「ピアス記念日です」

「うん。……うん?」

納得しかけて、黒子の言葉を頭で反復する。

「ピアス記念日です」

繰り返す言葉に、んー、と頭を巡らせて。

「あー……うん、そっか。去年の今日だったっスね、俺がピアス開けたの」

「はい」

「そっか。これ買ってもう一年経つんだ」

耳に付けている、シルバーリングのピアスを指先でコロコロと転がしてみる。

「新しいの、買おうかな」

「また片方くれますか?」

「うんもちろん」

去年初めて買ったピアス。

黒子が選んでくれたシルバーリングのピアスは、片方は黄瀬の左耳で光りその存在感を示し、もう片方は黒子の手元で大切に保管され合宿や黄瀬家へのお泊まりなどで長く部屋に戻らない時はお守り袋に忍ばせている。

「また選んでよ、黒子っち」

「ボクのセンスでよければ」

「もー殊勝っスね黒子っちは。これ皆にすごい評判いいんスよ、どんなファッションにも髪型にも合うから」

「そうですか?じゃあ次も何にでも合わせられそうで、且つ黄瀬君を綺麗に引き立たせてくれるピアスを厳選しますね」

「うん、お願いします」

笑顔で撫で撫でと頭を撫でる黄瀬、嬉しげに顔を綻ばせる黒子。

(何このグッドタイミング神様ありがとう!)

夏休み最後のショッピングに出て来ていた黄瀬のファン(兼黒子の女友達)に見られていた事を、2人は知らない。

この時買ったのは、黄瀬と黒子を連想させる黄色と水色の石が寄り添うようについているピアス。

何となく聞いた「黄瀬、ピアス変えたのか?」に、その朝の耳の甘噛みの件から黒子から懇切丁寧に話して聞かせられて里内が後悔するのは、夏休みが明けた新学期の事。



end



寝てる黄の耳をはむはむしてる黒を想像したらくっそ可愛かったんで勢いで書きました。



更新日>>2014.08.30
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