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□えんきょりれんあい
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「楽しそうでもあるけど、今日はずっとご機嫌さんだねテツヤ。何かいい事あった?」

黒子を抱き上げて、ん?と赤司が返事を促すように首を傾げる。

「ふふ、しりたいですか?」

「うん、すごく知りたい。教えてくれる?」

赤司は、普段誰にも見せない菩薩の微笑みを黒子に見せる。

むしろこれは黒子専用と言えよう。
黄瀬達や他の部員達にも笑顔を見せない訳ではないが、目の奥が笑っていない場合が大半なのでさながらそれは「魔王の微笑み」なのだ。

黒子は、自分だけに見せられた赤と金の優しい瞳に口元を押さえてもう一度ふふっと笑った。

「なら、とくべつにおしえてあげます。きょうは、きせくんのいえにおとまりしてきせくんとめいくらぶするのです」

愛らしい微笑みの元、愛らしい口から飛び出たとんでもない言葉に、第一体育館の空気がピキッと音を立てる勢いで凍り付く。

ややあって、最初に動いたのはやはり赤司で。

「Make Loveか。テツヤは中々大人の言葉を知っているね。……どういう事かじっくり話を聞かせてもらうよ、涼太」

(魔王の微笑みキターー!)

心の中で叫んだのは黄瀬だが、黄瀬と同じ位置からその微笑みを見てしまった青峰達もビクッと肩を揺らした。

「いや、話も何も、今日黒子っちが泊まりにくるのは確かだけど、メイクラブとかそんなとんでもない、ってか黒子っち、そんな言葉どこで覚えて来たんスか!」

「?たつやおにいさんがおしえてくれました。すきなひととおとまりしたら、めいくらぶするんだって」

「だー!純粋無垢な天使にまた何教えてんスかあの人は!」

たつやとは、他校に通う黄瀬のバスケ仲間でもある火神の兄貴分で、可愛がってくれるため黒子もなついている人物。

彼はたまに黒子によからぬ事を教えようとするから、警戒は怠らずにいたのに。



「お前がどんな友達と付き合おうがどうでも、心底どうでもいいが、テツヤに会わせる人物は選ぶんだな」

赤司はそう言うだけで解放してくれたけれど、黒子がいなかったらきっとこれだけではすまなかったと思う。

(はぁ)

黄瀬は、目の前のふわふわの髪を撫でながら人知れずため息を付く。

カチリ。

「はい、終わったっスよ」

ドライヤーを止めると、乾いたばかりの洗い立ての水色の髪が透き通ってきらきらと輝いた。

「あたまがぽかぽかします」

ありがとうございます、と黒子が振り向く。


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