高黒
□[13]幸福の連鎖ーhappinessー
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「話せない。ボクが話して高尾君がその通りにしたら、それは「高尾君」の気持ちじゃなくなりますから」
「そっか」
高尾は一度黒子の目を見つめ、ふわりと抱き締める。
「未来の俺がどうしたかは分からないけど、今の俺がどうしたいのかを言うね」
高尾の腕の中で、黒子がコクンとうなづく。
「俺はずっとテッちゃんと一緒にいたい」
黒子の目に、涙が溜る。
「テッちゃんや皆が知ってる俺の過去なんて変わってもいい。皆に心配かける事になっても、俺はテッちゃんと一緒にいたい」
ぎゅうと強くしがみついてくる黒子を優しく引き離して、額と額を合わせて優しく笑い。
「俺、テッちゃんと一緒に未来に行く」
迷いなく、どこかに出かけるかのような口調で言いきった。
「そんな、事したら、もうこっち帰ってこれなくなりますよ。親や妹さんにだって、もう、会えなく……」
「テツヤ」
涙をぼろぼろ溢しながら言う黒子のその涙を、高尾は吸い取るかのように頬に口付ける。
「二度もテツヤとの別れを体験しなきゃならない以上に辛い事なんて、俺にはないんだよ」
「……っ、ふ……っ」
「テッちゃんはどうしたい?」
高尾はクスクス笑いながら、また黒子を抱き寄せる。
「俺と一緒にいたいって、思ってくれる?」
髪にキスして、涙の止まらない目にキスして、唇にキスして。
そして、とどめの一言は。
「「テッちゃんと結婚して子供作りたいな」ってあれ、俺的にはプロポーズだったんだけど、受けてくれないの?」
動画の中で、高尾は言った。
「俺、全然後悔なんてしてねーよ。すっげー幸せ!だから早く、」
あの日の俺を迎えに行ってきてよ。
とろけるほどに、優しい笑顔で。
「高尾、くん、ボクは、」
「うん」
「ボクも、ずっと、高尾君と一緒にいたいっ……」
皆には自分からは何も言わないと言ったけれど。
「高尾君、好きです。ずっと、ボクと一緒に、いて……」
高尾の優しい声と、優しく触れてくる手の温かさに、本心を押さえる事が出来なかった。
「当然っしょ」
もう一度、今度は深く深くキスをして。
「じゃ、行こうか」
「どこに?」
「どこって……未来。テッちゃんの時代。これからの、俺らの時代」
きょとん顔の鼻先に、キス。
「誰にも何も言わないで行く気ですか」
「うん。未来の俺もそうしたと思うんだよね」
けろっとした顔で笑う。