高黒
□[2]合宿1日目@*target 高尾*
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「違うんスか?」
「違うでしょう」
口ではそう言いながらも、黒子にとってこのタイミングで黄瀬が来てくれたのはありがたかった。
自分でも分かったのだ。やばいと思った。
高尾に抱き締められた時、少なからず頬が緩んでしまった。
いくら高尾が呼び方を注意しても、自分がこれではすぐ皆にばれてしまう。
しかし黒子は気付いていない。皆からは、緑間からも黒子は見えない位置に黄瀬がいる事、それが黄瀬の計算である事に。
(駄目っスよ、もうちょっと我慢しないと)
黒子のあの表情を見たからこそ引き剥がし黒子の表情がいつものそれに戻ったのを、ひっそりと黄瀬が安心した事すら黒子も高尾も知る由もない。
そんな4人の様子を、並んだ列から氷室がじっと見ている。
「仲いいよね、黒子君と黄瀬君。意外なのは高尾君かな」
「室ちんも黒ちんをハグしたいの?」
お菓子を食べながら見下ろす紫原に出来るならと笑う。
「抱き心地良さそうだよね」
「うん、最高。でも、するのは簡単だけど下心ある人には容赦なく腹にグーパンチお見舞いするから、室ちんはやめといた方がいいと思う。黄瀬ちんは毎回グーパンチされてたよ、学習能力ないよねー」
「さっきの高尾君は喰らわなかったじゃないか」
「だから、そういう事でしょ。下心がなかったんじゃないの」
「うーん、ガードが緩いようで堅いのか」
「それに、今無理に黒ちんに接触すると赤ちんに目を付けられるから気を付けてね」
「何でだ……ああ、恋人の事。まだ分からないの?」
「らしいねー。俺興味ないけど赤ちんが探すって言うからつきあってんの」
「敦は誰だか見当がついてる?」
「全中終わって黒ちんが姿消してからストバスの大会で再会するまで会ってなかったんだよ。つく訳ないじゃん」
「そうか。俺もちょっと興味が出てきたな」
楽しそうだと4人を見る氷室を、紫原はもう一度見下ろす。
その瞳は、どこか監視でもしているかのようにじっと見据えていた。
「はいはーい、そこいつまでも戯れてないで整列する!もう全校揃ってんのよ!」
パンパンと手を叩いて叫んだのは、リコ。
「真ちゃん、行こっか」
「お前とは並んで歩きたくないのだよ」
不機嫌を隠す事なく、緑間は足音も荒く先に歩いていく。
そして数歩先で立ち止まり、肩越しに振り返って眼鏡をくいっと持ち上げた。