Ifの世界

□序章のような。
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まだ寒さも残るがよく晴れた、早春の朝。メゾン・ド・章樫に新入居者が、来た。

「はじめましてッ。」

アルトボイスが、偶然入居者全員が集まっていたラウンジに響く。

「今日から妖館で五号室のSSをします、雷禅寺早乙女ですッ!」

心から笑っているような嫌みのない笑顔を全員に向けている。

「雷獣の先祖返りでーす。よろしくお願いしまーす。」

間延びした挨拶をした後、黄色に近い金髪のツインテール頭を下げた。
黒縁メガネを掛けているので目元はよくわからないが、かなりの美人であろうことが窺える。

「あ、えと、五号室の、風竜芙羽羅、です。ふふ風神の先祖返りです。よ、よろしくお願いします。」

たどたどしく自己紹介した後、ペコリとお辞儀した。
顔を上げると、ふわりと銀髪が揺れる。笑顔はぎこちないが、紛れもない美少女だ。
おどおどしながらも空色の瞳を全員に向けている。




あぁ、本当に[はじめまして]だ。
今まで繰り返した人生はほとんど視えたことがあるはずだが、この明るく裏表のない人と、優しそうなふわふわした女の子は覚えがない。

つまりは、前世でも、そのまた前でも会ったことがない。



今回のSSのペアと皆の年齢は、今でも忘れられない[あのとき]と同じだった。
だから似たような人生を歩むのかと思えば、かなりズレてしまったみたいだ。






楽しみが1つ、増えた。






いったいどんな人生になるのだろう。





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