胡蝶の夢
□胡蝶の夢
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明日起きたら夢占いのサイトに行ってみよう
私は無機質な部屋の隅で膝を抱えて座ったまま、そう決意する。
占いの信憑性なんてこの際どうでもいい
大切なのは、この夢の謎に迫るきっかけを見つけること
そしてもうひとつ、明日目が覚めてもこの夢の内容を忘れない様に強く意識する理由を持つこと、だ
明日こそ、この夢のことをちゃんと覚えておこう
反対側の隅に置かれたベッドに腰掛けている少年を眺めながら、何度も確認するように私は自分にそう言い聞かせ続けた。
【胡蝶の夢】
恐らく、ここ数週間の間に何度も繰り返し見続けている(…はずの)不思議な夢。
それは決まって小さな部屋の夢で、そこには1人用の簡素なベッドだけが置かれている。
そしてそのベッドには少年が座っているのだ。
私は、気付けばいつも部屋の隅に座り込んでいて、特に何をするということもなくそこにいる。
彼も、私に対して何かしてくる事はなく、ただ時折サイドテーブルに置かれた食事のトレイをチラリと眺めては小さな溜め息を溢す。
そう言えば、彼が食事に手をつけるところは今まで一度も見た事がなかった。
…これは、もしかしたら深層心理ってやつだろうか?
冒頭の決意の後、他にする事のなくなった私は、次にそんなことを考えてみる。
例えば、この状況から推測するに、今の私は孤独や閉塞感に苛まれながらもなんとか栄養を摂取しては仕事に向かおうとしている、と感じているのかもしれない。
そこまで意識した事はないけど心の奥ではそう思っていて、つまり今の仕事に疲れている…と?
(え?じゃあ、あの子は?あれも私の深層心理なわけ?)
思わず見つめたベッドの上の少年(12,3歳くらいだろうか?これがまたいくら眺めても飽きそうにない、絵に描いたような美少年だ)は、なぜかまたひとつ小さな溜め息を吐く。
(美少年を見続けたい…そんな欲求………という事は、まさか、実は自分で気付いてないだけで私にはショタコンの気があるって事!?)
私にそんな趣味があったなんて…
(いや、まだ確定した訳じゃないし!…まぁ確かにこの子ってば超可愛いし、こんな子なら全然許容範い…いやいやいやいや!それ完全に犯罪コースだし!!)
「……はぁ〜」
最悪だ
なんでこんな夢を何度も見なくちゃいけないんだろう
彼の溜め息に呼応するように、思わず私も声に出して溜め息を吐いた。
ふと、ベッドの上の少年がこちらを向く。
艶のある黒髪をさらりと揺らして、明るい茶色の瞳が初めてこちらに向けられる。
「え?」
「…え?」
彼が、こっちを見てる?
「「……え…?」」
呟きが、ユニゾンする
私はまさかの展開に、顎を上げてまじまじと彼を見つめ返してしまった。