sirena頂き物

□ぐるぐる小話
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「おぉー…これは!ココさんのぐるぐる!」

仕事から帰るココを待ちながら一人 留守番をしていたナナは、部屋の片隅で見覚えのある布を発見した。
これは――ココの腕や足に巻かれた謎のぐるぐる布。

『なぞの ぐるぐるを てにいれた!』

脳内でRPGのようなナレーションを入れながら、ナナはしげしげと布を見つめた。

「予備の布かなぁ…おぉー…こうなってるのか…」

伸ばして、広げて、透かして、うんうんと頷く。
そして、ちょっと自分の腕にも巻いてみた。

「あれ、意外と難しい…すぐゆるんじゃうんだ」

ココの器用さに感銘を受けつつ、ナナは着用を続行する。
何度挑戦しても、細くヒラヒラとした布はあざ笑うように腕からするりと滑り落ちた。

…悔しい。
こうなったらコココスプレ、絶対に成功させてみせる!

(…そうか、服を着てるから滑るのかも)

ナナは周りを気にする事なくガバッと服を脱ぎ捨て、あらわになった二の腕に布を巻き始める。

「…あ」

ゆらめく細い布からほのかに香る、ココの匂い。
薬草のような、香水のような、不思議な香り。

「ココさんの匂い…」

クンクン。
思わずしっかり嗅いでみる。

「ココさんの匂いー!」

ニコニコと満面の笑みを浮かべて自分の言葉を復唱し、ナナは満足げにココの布に顔をうずめた。

自分の肌につけてココの匂いが消えてはもったいない。
先にこの残り香を堪能すべきではないか。
冷静な判断に基づき、ナナは目的を変更する。

「ココさんの匂い〜好き好き〜」

ゴロゴロと布とじゃれ合いながら、床を転がる。
布が体に絡みついて縞模様のナナが完成した。

「ミイラー!ココさんミイラー!」
「・・・楽しそうだね」

「!?」

笑いをかみ殺した静かな声に、ナナは弾かれたように立ち上がる。
そこには腕を組み、笑みを浮かべるココが立っていた。

「ココさっ…いつから!えっ、や、おかえりなさい!これは!これはですね!!」
「ただいま、ナナちゃん。何をしていたんだい」

「違うんです!これは!誤解で!」
「ボクの服を嗅ぎながら床を転がり回るのが、誤解なのかな?」

楽しそうに、あくまでも楽しそうに、尋問を開始するココ。
ナナは真っ赤になって首を振る。

「いえ!わざとじゃないんです!
だって!ココさんの匂いを嗅げるのは私だけだから、むしろ堪能しないのは罪っていうか!」

ほら、私、毒が効かないですし!とナナはよくわからない論理を展開した。
ココは静かに頷いて近づいてくる。

「なるほど、キミの主張を全面的に受け入れるなら、ボクもキミのただ一人の恋人として、同じ事が許されるわけだね」

「へ…」

「キミの香りを楽しめるのはボクだけだから、堪能しないのは罪だろう?」

「いやいやいや それとこれとは!話が別と言うか!」

「だいたいそんな格好で、ボクを誘っているとしか思えない」

「…え」

我に返り自分の体を見下ろせば、ほとんど半裸――上半身 下着に謎の布という、とんでもないいでたち。

「違うんですよ!これは!不可抗力で!!」
「じゃ、有り難く堪能、させてもらうよ」

笑顔のココに担がれ、あっという間にベッドに連れ込まれたナナは、至る所に顔をうずめられ深呼吸されるという辱めを受け、
顔から火が出てもはや丸焦げになる寸前、いつもの愛しい行為が戻ってきた。
ナナは気づいていないようだったが――ココは心の底から幸せを噛みしめ、ナナを抱きしめる。

(こんな風に愛し合えるなんて、ボクには夢のようなんだよ、ナナちゃん…)


その夜は、濃厚な一夜だった。


夜明け前、ナナはポツリとココに尋ねる。

「…そういえばココさん、いつから見てたんですか」
「『これは!ココさんのぐるぐる!』あたりかな」
「最初じゃないですかーーー!!」

Fin
 

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