愛玩人形

□気になるあの子
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──────最近なんだか翔が素っ気ない


ここ数日の間、俺はこれに悩まされている


挨拶は一応してくれるけど、妙に余所余所しくて目も合わせてもらえない


皆と居る時も俺の方は一切見なくて寄っても来ない


淳君や研二とはガッツリ絡んで楽しそうに笑ってんのに


どういう訳か俺にだけ翔の態度が冷たい


原因を考えてはみるけどさっぱり分からない


と言うか、気になってる‥否、好きな子に避けられんのってかなり辛い


…俺、何かした?


他の奴じゃなくて俺を見ろ!一瞬でもいいから…振り向いて……










「ん?翔って香水変えた?」

「………や、変えてない。変える気もない」

「そう?何か違うような…」

「何時もと一緒だよ」


空き時間にロビーで雑誌を読んでる翔を見付けて勇気を出して話し掛けてみる


返事は返ってくるけど視線は雑誌に向けられたままでこっちを見てくれない


じわじわ距離を縮めていくとフワリと香る匂いが違う


何時もの甘い系じゃなくて別物の…どっかで嗅いだ事のある香り



「鬼龍院さーん!忘れ物っ」

「淳君!」

「……!!」


不意にiPodを持ってエレベーターから降りてきた淳君


俺の前を通り過ぎた時に香った匂いに俺の嗅覚が反応した


翔から香ってきたのと同じやつ


ついさっきまで淳君と一緒に居たんだ


「あーゴメンねιわざわざ有り難う」

「さっきの良かったからまた聴かせてくれる?」

「なら今一緒に聴く?」

「良いの?やったー」

「・・・・・・・・・・・・・」


淳君が来るなりニコニコ笑顔で応えてる


久し振りに見た可愛くて大好きな笑顔


俺じゃなくて淳君に向けられてる


二人仲良く寄り添ってイヤホンを片方ずつして何か聴いてる


…俺は無視かよ


「匂いが移るまでくっついてんじゃねーよ」


…何か胸の辺りがズキズキして痛い
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