* change of heart *

□15話 受け継がれる想い
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食事中にばあちゃんがいきなり話題を振ってきた。

「ツバキの彼女さんはどんな人なの?」

「んー。良い子だよ。可愛いし」

「へぇ〜。良かったわねぇ。私も会いたいわぁ。
でもツバキはこっちで泊まり込みで修行するんでしょう?
彼女さんは心配しないの?」

「どうだろ? あいつもオレと同じように修行しているしな。
どちらかと言えばオレの方が心配してるよ」

カエデを想い、ため息を吐く。
カエデはこの地方でチャンピオンに次ぐ実力を持つキュラスさんの元で修行をしている。
シランさんとキュラスさんはどんな関係なのだろうか?
カエデはその修行に耐えられるだらうか?
そもそもカエデは本当に立ち直っているのだろうか?
色々と不安であったりする。

オレが頭を悩ませているとじいちゃんが馬鹿にしたように笑った。

「まぁ、他の人よりも自分のことを心配するんじゃな!
儂の教えについてこれるかのう!」

「今のオレなら大丈夫。もうあの頃とは違うから」

「ふん。お手並み拝見じゃ」

ニヤリしたじいちゃんは一言、ご馳走様とだけ言ってテーブルから立ち上がる。

そして自分の皿を台所まで片付けに行った。
その行動にばあちゃんに良く教育されてるなぁとしみじみ思う。

オレもその行動に倣って皿を片付けた後、外に出ていったじいちゃんを追いかけた。


外に出ると沢山のポケモン達が目に入った。
ここは祖父母が営む育て屋である。

過去、育て屋ではポケモンを預けたまま捨てていってしまうというトレーナーが問題になっていた。
現在のシューレン地方ではその対策として個人情報の詰まった身分証明書でもあるトレーナーズカードを認証しないと預けられない仕組みになっている。

しかし祖父母の育て屋はそのシステムを導入していない。
理由は二つ。
ただ単に祖父母が機械音痴である、ということ。
もう一つは他と比べて、よりポケモンが強くなると評判であるからだ。

その後者の要因は紛れもなく、じいちゃんのトレーナーの実力にあるとオレは思っている。

「ツバキ。早く来ないか」

「あぁ、ごめん」

開けた草原にじいちゃんとオレは向かい合った。
涼しげな風が草原を優しく撫でる。

「さて、伝授してやろう。ポケモンを強化させる術を。
その名も『盛装』。まぁ儂が名付けたんじゃがな。
お前さんには前に教えたじゃろう?」

オレは神妙に頷く。
『サイコキネシス』をフィルに纏わせて自由自在の高速戦闘を可能にさせた戦術。
最近ではセツナさんとのバトルで披露したきりだ。
技を纏い戦う。それが『盛装』である。

「さぁ、始めようじゃないか。出てきなさい、フシギバナ」

「フィル。任せた」

青々と繁った草むらからフシギバナが顔を出した。
オレの斜め後ろから、フィルが前に出てくる。

「手加減はせんぞ。ツバキ」

「ああ……!」

目の前にいた老人はいつの間にか歴戦の戦士の顔をしていた。
やっと一人前のトレーナーとして認めてくれたことに自然と頬が緩む。
じいちゃんはそっと左腕を掲げた。
その腕にはキーストーンが付いたメガリング。

「深緑の大地よ、我が咆哮と共に天を穿て。メガシンカ」

メガリングとメガストーンが共鳴し、白と緑が入り雑じった光がフシギバナを包む。
光は大きく丸い渦を描き、弾けた。
その光の雪は煌めきながら儚く消えていく。
輝きの中には姿の変わったフシギバナが現れた。

「これがメガシンカ……」

巨大化した花とそれを支える為の逞しくなった足腰。
頭と尻尾には新しい花が咲いており、一目で強くなったことを認識する。

「『盛装 森羅』」

じいちゃんの指示と同時に背中の花の下から数本の太い根が伸びて地面に突き刺り、巨体が固定された。
フィールドには色とりどりの花が咲き乱れ、フシギバナの背からは更に草花が増えていた。
まるで――――植物の要塞だ。
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