* change of heart *

□12話 噛み合う歯車
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*ツバキside


再編成試験の次の日。
同じfirstクラスのミズキにとあるバトルフィールド付近に呼び出された。
何のことだろうと到着して暫く待つと、ミズキがボーマンダに乗って降りてきた。

「何の用だよ。ミズキ」

「へぇ、ちゃんと来たんだ。偉い偉い」

「ぶん殴るぞ」

「か弱い女の子に手を出すんだ?」

「悪ぃな。か弱い女の子が見当たらな……うおっ!?」

言い終わる前にミズキの右ストレートが頬を掠める。

「聞こえなかった。もう一回言ってくれない?」

「いや、止めとく……」

「そっか、そっか」

か弱いって何だろう。と思いながら話を元に戻す。

「結局、用件は何だよ」

「カエデとちゃんと話をして欲しい。あんたらはお互いを知らなさすぎるから」

あまり気が乗る話じゃないな。
そう思って嫌味たっぷりに言う。

「ラグナのオレがお前の親友に近づいてもいいのか?」

「あんたは悪い奴じゃないと思う。カエデのこと、大切に思ってくれてるでしょ?」

「いいや。オレはあいつを利用してるだけだ」

「はいはい、そうですか」

ため息を吐いたミズキはやれやれと首を振る。
その一連の動きに対する苛立ちを隠しきれずに尋ねる。

「自分の過去は打ち明けないで他人の過去は打ち明けて欲しいってか?」

「あたしも話し合いには参加するよ。もちろん他言はしない」

「それでもオレには何のメリットもねえよ」

帰ろうとしてくるりと回れ右をする。
するとミズキは大声で話しかけてきた。

「メリットはない! でもカエデのことをもっと知って欲しいんだよ!」

立ち止まり、身体をミズキへと傾ける。

「何でそこまでするんだ?」

「……あの子が自分のことで泣かないの知ってる? たとえ自分のことを気味悪いとか言われてもね。泣くのはいつだって他人やポケモンの為なんだよ」

「………………」

「あたしはさ、カエデのことが一番大切なんだよ。どっかの馬鹿兄貴よりもずっと。
だからあんたにはカエデのことを理解して欲しい」

確かに思い返してみれば泣いていたのはポケモンたちを傷つけられた時だった。
そしてミズキの眼差しは真剣そのもの。ここまで覚悟のある奴を言いくるめるのは流石に難しそうだ。

「……はぁ、分かったよ」

「本当に!?」

「ああ、行ってやるよ。この先だろ?」

驚いた表情のままコクコクと頷くミズキ。
ミズキに案内されオレはカエデが居るというバトルフィールドへ向かった。
 
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