* change of heart *

□10話 初ゲット!
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*カエデside




捕獲を失敗した私は次の相手を探していた。
しかしこの辺りのポケモンは先程の光景の目撃者だった為か、私を見るなり逃げ出していく。

「みんな、怖がってるなぁ…」

確かに酷いことをしたのは事実だし…。
諦めかけている私にツバキくんはある提案をした。

「ポケモンたちなら洞窟の中にもいたぞ? 行ってみるか?」

「洞窟かぁ…。うん、そうするよ」

こうなったら何としてもポケモンをゲットしたい。
私は洞窟を目指すツバキくんの後を付いていった。

突然、視界の端で何かが跳ねるのが見えた。小川の中だ。
確かあれはコイキングだった筈だ。
進化すればとても強いポケモン、ギャラドスになる。
私は小川へと駆け出した。

「おい、どこ行くんだよ!?」

ツバキくんの声も聞かずに小川の手前まで行くとモンスターボールに手をかける。
跳ねるタイミングを見計らう。

「いっけえっ! モンスターボール!」

モンスターボールは跳ねたコイキングを捉え、簡単にボールの中に吸い込まれていき手元に戻ってきた。
そしてお決まりのポーズ。

「やったぁ! ポケモンゲットだぜ!」

「お前、色々と自由過ぎるだろ……」

「一回やってみたかったの! じゃあ出ておいでコイキング!」

早速捕まえたコイキングを出してみる。
宙に放たれたボールから出てきたポケモンは地面の上でピチピチと跳ねていた。
でも何かがおかしい。色や見た目が違う。

「あれ? 何か違う……。色違い……じゃなさそうだし…」

「お前、コイキングって言ってなかったか? でもコイツ、ヒンバスだぞ?」

「ひんばす? でもどんなポケモンだろうと捕まえたからには大切に育てるよ!」

「知らないで捕まえたのか……。…まぁ、頑張れよ」

何故か呆れているツバキくん。確かにヒンバスは知らなかったけどね。
そういえば何に進化するのも知らないなぁ。帰ったら調べてみよう。
そして私はヒンバスを抱き上げた。


私は能力を使ってヒンバスの気持ちを読みとる。

「ごめんね。勝手に捕まえちゃって。あなたにも家族とか友達とかいたのにね…」

捕獲の後から出てきた罪悪感を口にする。
自分の我が儘でこの子の環境を変えてしまったのだ。
この子の家族からしてみれば私は誘拐犯だ。
しかしヒンバスから返ってきた言葉は意外なものだった。

『あ、えと、あのまま居ても……その…虐められてただけだから……』

「い、虐められてたの?」

『う、うん…。こんな姿だからね…』

「そっか…。でもここにいる皆はあなたの事、虐めないから。安心して?」

『あ、うん…。あの、あなたの名前は…?』

「私はカエデっていう名前なの。
そうだ! あなたの名前、付けなきゃね! うーん、そうだなぁ…。カルミアは? 多くの仲間って意味なの。今から皆あなたの仲間だからね。どうかな?」

『わ、私には勿体ない名前です…。でも……嬉しい…です。大切にします』

「良かったぁ。よろしくね、カルミア!」

『あ、っと、こちらこそ、よ、よろしくお願いします…。…カエデさん』

そう言い終えるとヒンバス、もといカルミアはボールの中へ戻っていった。
 
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