* change of heart *
□1話 昔話
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「邪魔するぜぇ!! さっさと終わらして帰るぞ!! 」
「貴様に指図される覚えはない」
「何なの!!? あなた達!? 」
どしゃ降りの雨の中、見ず知らずの赤髪と青髪の男女二人組が怒鳴り込んでくる。穏やかな暮らしが一瞬にして崩壊した。
「そこに居るガキを渡せ!! そうすりゃあんただけは見逃してやるよ!! 」
赤の短髪の男が叫ぶ。
何が起きたか分からない。
でも自分達に危険が迫っていることだけは感じた。男達が入ってきた時から震えるこの体を母さんが力強く抱きしめた。
「ツバキは絶対渡さないわ!!! お願い! クイン!! クル!!」
片手でボールを取り出して開閉ボタンを押し、いつも母さんの家事を手伝っているニドクインことクインとランクルスのクルを出す。
「あ゙ぁ!? 殺してくれっつー意味でいいんだなぁ?」
「加減はしてやろう」
男達もボールを取り出しハッサムとクリムガンを出す。
「ツバキ!! あなたは裏口から逃げなさい!! 」
「でも…母さんが…!! 」
自分を床に下ろし逃げるように促す。
今まで戦っている所を見たことがないクインとクルに母さん。勝つことは難しいだろう。
「私はいいから早く行きなさい!!! 」
「………っ!!! 」
しかし自分が居ても足手まといにしかならない。
今は母さんを信じて家から飛び出した
後ろから男の怒鳴り声が聞こたが無我夢中で走った。
冷たい雨の中を走る。
母さんは無事だろうか。それとも負けてしまったのか。でもそんなはずは…。
色々な可能性を出しては否定する。
考えれば考えるほど自責の念に囚われていく。
「はぁ、はぁ、うわっ!?」
もうすぐ近くの家に着くというところで躓いて転んでしまう。
その拍子にモンスターボールが転がり中からラルトスのフィルが出てくる。
彼女は心配そうに主の顔を覗き込んだ。
「ごめん…フィル…僕どうしたら……」
突然ラルトスが服の裾を掴み前へ引っ張った。まるで逃げろと言ってるみたいに。
「まさか……そんな…!? 」
後ろを振り向くとクリムガンを連れた青髪の女がこっちへ向かって来た。咄嗟に臨戦態勢をラルトスと共にとる。
「母さんはどうした!? 」
「悪いが奴と敵対したら助からんと思った方がいい。貴様は諦めてくれないか?」
「ふざけるな!フィル『ねんりき』!」
ラルトスに攻撃指示を出す。が、クリムガンは気にしない様子で『ねんりき』による締め付けを振り解く。
「力量の差が判ったか?貴様がどう足掻いたって勝てはしない。諦めろ」
冷酷に現実を突きつけられる。でも自分より母さんが心配だ。だから…。
「勝とうなんて思ってない!フィル、テレポート!!」
フッとその場から姿を消す。取り残された女は「諦めろと言ったからな」と低く呟いた。