* change of heart *

□13話 心変わり 前編
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*カエデside




トレーナーズスクール再編成試験から一週間後。

今日はバトル試験の結果発表だ。
私はチルタリスのフリージアと一緒に『そらをとぶ』で登校する。
本当はバッジを持っていなくてはいけないのだが特に問題はないと思う。
それにこの高さなら蒼目になってもバレないので人目を気にせずにポケモンたちとも会話できる。

「うぅ〜ん、気持ちーいっ」

『カエデは空を飛ぶの好きだよねぇ』

「この景色と風が好きなの!」

『あー、それは分かるなぁ』

フリージアと終わりかけの夏の風を全身で浴びながら真っ青な空を横切る。
太陽が近い為かワイシャツがじとっと汗ばんでいた。

遊覧飛行をしながらフリージアとの会話を楽しんでいると突然、視界の端に何かを捉えた。

「わぁ……」

視界に映ったのは黄金色に輝く大きな光。
大空を優雅に泳ぐその光の通った道筋は星屑を散りばめたように尾を引いていた。

目を凝らすとその正体は一匹の鳥だった。
いや鳥というにはおこがましいその荘厳な姿に私は暫く見とれていた。

「綺麗……」

『……カエデ?』

「フリージア、あれ見て」

『凄い。キラキラしてる』

ホバリングするフリージアと共にその神鳥が青空のキャンパスへ溶け込むのを見守っていた。
その姿を見送った後、ハッと我に返った。

「あ! 遅刻するっ!!」

『はっ!? カエデ、急ぐからしっかり掴まってて!』

雲を模した羽毛をぎゅっと握りしめた途端にフリージアは全速力で羽ばたいた。
目を開くことを許されないその速度は夏の空気を切り裂き、突き進む。

あっと言う間にスクールの校門前に着いた。
フリージアにお礼を言ってボールへ戻し、蒼目も橙色へと戻す。
手櫛で髪を整えながら時間を確認する。
どうやらフリージアのお陰で時間に間に合いそうだ。

「ん〜っ! 何だか今日は良いことありそう!」

ぐーっと伸びをした私は一歩、踏み出した。




教室に行く前に職員室の廊下に寄る。
筆記テストと同様に結果発表の用紙が張り出される。
そこに行くとだいぶ人集りができていた。

騒然とする人混みをかき分け発表用紙の目の前にやっとの思いで辿り着く。
そこには信じられない内容が記載されていた。


なんとfirstクラスに昇格する人名の欄に私の名前があったのだ。

「え………?」

未だにその事実が呑み込めない。
記載ミス? それとも誰かと間違えた?
そんな言葉しか浮かんでこない。

「カエデ!」

凛とした、聞き慣れた声の方へ振り向く。と同時に力強く両肩を掴まれた。
驚きと戸惑いの混じった私の瞳には親友が写っていた。

「凄いじゃん! thirdクラスからfirstクラスに上がるなんて!」

「な、なんか信じられない……」

ミズキに揺さぶられながら不安を口にする。
するとミズキは私の肩から手を引き腰に手を当てた。

「まぁ、無理もないか。うちのクラスに来たら実感するんじゃない?」

「う、うん」

「じゃあまた後でね」

手を振ってミズキと別れる。
結果発表の用紙をもう一度確認するが夢ではないようだ。
名前の欄の端に『右に記名された生徒は朝会の前に職員室に集まるように』と記載されていた。

 
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