* change of heart *

□11話 夏の成果
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*ツバキside




長かった夏休みも明け九月上旬となり、一週間前に始業式も終えていた。

最近では真夏日のように暑くなることも減っていき、急に寒くなったりするなど気候も移ろってきている。


オレは登校の準備を終えてソファーでゆったりと寛いでいた。
キッチンではサーナイトのフィルが朝食の用意をしており、トントンと食材を切る心地良い音が室内を満たしていた。


オレは現在、問題を二つ抱えている。
一つ目はシランさんのこと。
この前、突然に病院からシランさんが意識不明のままで入院していると連絡が入った。
その後三日間眠り続けて数日前に目覚めたばかりだ。
今は何があっても対応できるようにサクラさんの家で休養にしている。
何が原因でこんなことが起こったのかを尋ねてもシランさんは口を閉ざしたままだった。
大方ラグナ絡みだろうと予想はつくが。
ただその予想が当たっているとすると一つの悪い結果が必然的に導き出される。

――あのシランさんが負けた、ということ。

あんなに強いシランさんが負けたとなるとラグナと敵対しようとしているオレも覚悟を決めなくてはならない。



そしてもう一つは今日、カエデが重大な試練を目前にしていることだ。
この日の為に辛い夏休みを過ごしてきたと言っても過言ではないだろう。
その試練とは──


トレーナーズスクール再編成試験──。



概要はこう。
まずクラスごとに難易度の違うテストを受けてそれぞれのクラス順位で上位五名の者、下位五名の者を選別する。
そしてクラスの昇格と降格を賭け、先生とバトルをするのだ。

今回、カエデがグレイと行うバトルはsecondクラスへの昇格試験だ。
先生たちはそれぞれのレベルに合わせたスクール用のポケモンを使う。
たがら一応短期でもこのスクールの先生であるグレイはsecondクラス昇格試験用のポケモンを使わなければならない。


この夏休みに必死に努力したカエデなら余裕で勝てるだろう。
もしグレイがスクールのルールを守ってバトルすればの話しだが。


アイツのことだからルールなんて守らずに徹底的にカエデを潰しにかかるだろう。
あとはグレイがfirstクラス昇格試験用のポケモンを使うか、自分のポケモンを使うかで勝敗が別れてくる。

でもきっと、グレイは……。


考えかけて、中断する。
オレがあれこれ思案したって仕方がないのだ。
戦うのはカエデでありオレではない。
オレはアイツが全力でバトル出来るようにサポートをするだけだ。


ふと自宅の時計を確認する。
今日はカエデと一緒に登校すると約束していた。

『主人、朝ご飯できましたよ』

「あぁ、今行く」

キッチンからいい香りが漂ってきた。
フィルのいつも通りのテレパシーの呼びかけに応じて、食卓の席に着いた。
フィルの作ってくれた朝食はいつも通りに美味しかった。


 
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