* change of heart *

□10.5話 夏空に馳せる思い
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*ツバキside



ガバイトを捕まえた翌日のこと。
近くのバトルフィールドでガバイトとゾロアのミラがバトルを繰り広げていた。
オレは指示を出すことなく近くの木の根元に腰を下ろしていた。

『ふふん! どこ狙ってんのさ!』

『ちょこまかと、うざってえ!』

何を言い合っているのか分からないが、バトルを見ている限りミラがガバイトをからかっているのは分かった。


オレは静かに溜め息を吐いた。
またあの日の夢を見たからだ。母さんを失ったあの日の。

時々見るその夢がオレの復讐心を忘れさせないでいる。
その復讐について最近思うところがある。

オレはカエデを復讐の道具として使っているんじゃないか――と。


そう考えるだけで胸が苦しくなる。
もちろん、そんなつもりで面倒を見ている訳ではないのに。

しかしそんな密かな気持ちも黒い霧がかかったのように霞み、消えていく。
そして残るのはラグナへの憎悪だけ。

最近そんな感情を繰り返している。
流石に繰り返しこんなことを続けていればこんな感情があった、という事実は記憶する。
その感情を思い出せないだけで。


もう一度溜め息を吐いた。
ふと一つのことを思い出す。

「あぁそうだ、ガバイト。
お前の名前『リュード』な。『怒れる竜』で」

『はぁ!? 今、話しかけんじゃ……!』

『隙ありッ!』

『ぐはあッ?!』

オレの話で気が逸れたガバイト改めリュード。
そんな隙を見逃すこと無く、ミラは顔面目掛けて『あくのはどう』を撃ち込んだ。
リュードは見ているこちらが清々しく思えるほど綺麗に吹っ飛んだ。

「おー。流石ミラ」

他人事のように呟くツバキ。

ぐったりと地に伏していたリュード。
勝ち誇った表情でリュードの上に立つミラ。

そんな光景を視界の端に入れながらツバキは複雑な表情で真っ青な高い空を仰いだ。
 
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