短編集
□幼い少年と臆病な狐
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リンカ(ロコン→キュウコン)side
人間は怖いもの。
そう母上に教えられました。そして実際そうでした。
小さい頃、まだ私がロコンだった時に母上と父上とはぐれてしまいました。
そして三日間両親を捜して疲労した私はいつの間にか街に迷い込んでしまったのです。
その街で初めて人間を見ました。
そこで私は人間は教えられた通り怖いものと感じました。
私は人間に虐めを受けたのです。
野生で育ってきた私は縄張りに入ってしまい攻撃を受けたことはありました。
けれどこの人達はただ楽しむため、自分達の快楽の為に私を傷つけたのです。
弱く疲れた私は抵抗する事が出来ませんでした。
悪あがきに必死に叫んでも厳しく優しい母上や強い父上が駆けつけてくれることはなく、また周囲の人間も助けてくれることはありませんでした。
飽きてきたのか相手の攻撃が緩んだとき私は命からがら逃げ出すことができました。
振り返ってみると奇跡だったと思います。
傷だらけの身体を引きずって兎に角遠くへと逃げました。
気付くと全く知らない森で体力も尽きかけていて動けなくなっていました。
自分の心境とは反対な暖かい太陽の日差しが私を包んでいました。
死んでしまう。
初めて死に対しての恐怖を抱きました。今までずっと母上と父上に守られてきましたから死ぬなんて思った事は一度もなかったのです。
怖い怖い怖い怖い怖い――。
そんな気持ちとは逆に意識は朦朧としていきました。
もう諦めて意識を手放そうとした時でした。
あなた様に。ツバキ様に出会ったのは――。
「大丈夫!?傷だらけだよ!?」
薄く目を開け私の瞳に映ったのは幼い黄色い髪の少年。
まだ人の言葉が理解できなかった私はもう駄目だと目を閉じて死を覚悟しました。
そして意識を手放しました。