短編集
□幼い少年と臆病な狐
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暖かい。
目を開けてみると目の前は真っ暗。
『ここは?』
私は死んでしまったのでしょうか?
場所を確認をするために動こうとすると身体が痛みました。この痛みが私が生きていることを実感させました。
生きている。
そんな当たり前な事が物凄く嬉かったのです。
安堵した私は深い眠りに落ちました。
顔に朝日が射し込み目を覚ましました。私の瞳が映したのは眠った小さな子供の姿。
逃げなくては。直ぐにそう思ったけれどやはり身体は自由には動かなくて。
しかし自分に置かれた状況をもう一度考えてみました。
私の身体には白い柔らかな皮のような物で巻かれていて、先程よりも痛みは引いて楽になっていました。
彼が助けてくれたのでしょうか…?
そんな疑問を抱えていると黄色の髪の少年が起き出しました。
「良かったぁ、目を覚ましたんだね」
彼の心の底から安心した笑顔に先程の不安は掻き消され同時に逃げ出そうとしてた自分が恥ずかしくなりました。
『傷の具合はどうですか?』
少年の後ろから顔を出したのは見たこともない緑と白の色をしたポケモン。
『あ、自己紹介まだでしたね。私はラルトスのフィルって言います』
丁寧に話すフィルさんに私も自己紹介する。
『私は、ロコンです。私を助けてくれたのは…彼ですか?』
私たちの会話を不思議そうに見ている黄色の髪の少年を見やる。
『手当てをしたのは主人の母のサザンカ様です。けれど連れてきたのは主人のツバキ君ですよ』
――ツバキ様。
この人が私を救ってくれた方。