チロルのBook

□夜空への願い事
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河原に座りキラキラと無数に輝くお星様を眺めている少女が一人。
橋の上からユラユラと流れる水に目を向けて夜空から反射したまんまるのお月様を眺めている少年が一人。


その二人の目尻には微かに涙が浮かんでる。

そのせいで
少女の瞳に映っていたキラキラと輝く無数のお星様が数倍に見え、少年の瞳に映っていたユラユラ揺れるお月様は輪郭がハッキリしなくなった。

二人は涙がこぼれ落ちないように必死に堪えた。


だが、堪えているだけで涙が消えることはない。


それもそのはず、二人には悲しい現実が突き付けられているのだから。




二人には思い人がいる。

その思い人は自分のことではなく、違う人のことが好き――


(君の隣にはあいつがいて…。)


(あなたの隣にはあの子がいる…。)


((だから、伝えたくても伝えられない…。))


――だが、それはただの勘違い。


二人は思い合っている、だけど勘違いをしているから伝えられない。


((自分が傷つくのは怖いから…。))


結局は皆、自分のためだ。

だから、二人は思い合っていることに気がつかず傷ついてしまってる。

小さな勇気を出せば思いは繋がるというのに…。

そんなことも知らない二人は思い人の名前を呟いた。


「グレイ…。」


「ルーシィ…。」


そうして二人の目に溜まった涙が二つの線を描きながらツゥーっと重力に従って足元に落ちる。

そして小さな小さな水溜まりを作ってく。


こんなに臆病になってしまった二人は思いさえも伝えられないから夜空に祈るように願い事しかできない。


(オレが君の隣じゃなくてもいい…だから…、)


(あたしがあなたの隣じゃなくてもいい…だから…、)


((だからどうか、傍にいさせて下さい…。))


そして自分が作った水溜まりにまた小さな音をたてながら波紋が浮かんだ。

‡END‡


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