チロルのBook
□君がいてくれてよかった
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マグノリアが見渡せる丘で二人の少年・少女、グレイとルーシィは木にもたれ掛かり眠っていた。
するとルーシィが目を覚ます。
そこで太陽が沈みかけていることに気がつき隣で眠っている恋人を起こす。
「グレイ。起きて!風邪引いちゃうよ。」
「う〜ん…。」
「ねぇってば!!」
グレイは寝起きが悪いらしく何度声をかけても起きない。
そんなグレイにルーシィは負けじと声をかけつづける。
「グレイ起きて!!起きなさい!」
「ん…。」
やっと目が開いたグレイの手を恋人繋ぎで握り、グレイの手を引っ張る。
そしてようやく立ってくれたことにホッとしつつ前を向きグレイの手を引きながら歩く。
グレイになかなか起きなかったことについて怒ってやろうとグレイの方を振り向くとそこには涙を流したグレイがいた。
「グレイ?…どうして泣いてるの…?」
「え?泣いてる?」
グレイは自分の頬に手を持って行き、自分の濡れた頬を触る。
「大丈夫?」
「…あ。そういえば夢…見てたんだ…。」
「夢…?どんな夢だったの?」
「………。」
返事がないグレイにルーシィは悪い夢を見ていたのかと思いもう一度声をかける。
「嫌な夢なら無理に話さなくてもいいよ?」
「………デリオラに村を壊されて、親を殺された夢……。」
「え…?」
「ははっ…。今頃そんな夢を見るなんてな。」
本当はグレイはガルナ島での出来事があってからもまだデリオラのことについて立ち直れていなかったのだ。
デリオラが自分の大切な物を全て奪っていったこと、自分の大切な師匠を殺したこと、兄弟子の心を壊してしまったことを…。
「もう、立ち直れてたと思ってたのにな…。」
「…。」
「ごめんな。いきなりこんな話して…。」
「謝らないで。あたしはグレイがこのことについて打ち明けてくれたことが嬉しいよ?それにグレイだって秘密にしてたほうが苦しいでしょ?だから泣いたっていいんだよ…。」
グレイはルーシィの言葉を聞き、止まっていたはずの涙をもう一度流す。
「…うっ…く、」
グレイは自分の手で目を覆い止めることのできない涙を流しつづける。
ルーシィはこんなに弱さを見せてくれたグレイに嬉しく思い、ぎゅうっとグレイを抱きしめる。
「あたしにはグレイがいる。グレイにもあたしがいるでしょ?」
グレイは目を覆った手を離し、顔をルーシィの肩に乗せルーシィを抱きしめる。
「…そう、だな。ありがとう…ルー、シィ。」
「どういたしまして!ほら、帰ろう。グレイ。」
最後にグレイの背中をルーシィが数回摩ってやるとグレイからとめどなく流れていた涙が止まり、グレイが顔を上げる。
「酷い顔よ。」
涙でぐちゃぐちゃになった顔に少し笑いながら言ってやる。
「そうか?」
なんて言いながら顔をゴシゴシとふくグレイ。
「あはは。寒くなってきたし早く帰りましょ。」
「おぅ。」
今度こそ笑顔を見せてくれたグレイの手をとり家に向かって二人で歩きだす。
空にはすでに満点の星空が輝いて二人の帰り道をうっすらと照らしていた。
‡END‡
(もう泣かないでね?グレイ。)
(もう泣かねぇよ。)
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