H×H(長編)

□殺したいから
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今日僕は目を覚ました

目覚めたんだ

人間の本当の欲望に

そして

取り返さなければならない

”目”を。



目を開ければ知らない路上に
倒れていた

雨が激しくコンクリートをうつ

「此処は…」

周りを見回しても誰もいない

空には不気味なくらいの紅い月

黒いロングコートだけを身に付けた
身体には外の風は冷たかった

時節一際大きな風が吹き髪がなびく

長い銀色の髪に血が付いているのが分かる

「僕は誰だ、何処へ行けばいい」

ゆっくりと立ち上がると
自然と足が進む

路上を抜けても人はいない

頭がガンガンと傷む

しかしそれに比例し朦朧と思い浮かぶ記憶

「僕はカミ…」

自分の名前であろうものを呼ぶと
身体が高揚するのが分かる

たしか年齢は17…性別は見た目の通り女

そして”目”を探している

偽物か、本物か、誰のか何も分からない

けれど、探している

「此処か?」

かなり歩いたところに高級そうな
高層マンションがあった

まさか此処が自分の住んでいた所とは
思えないが自然と足が進んだことに
疑問は浮かばなかった

入口には暗証番号と指紋認証

「0000」

0を四つうつ

そんな気がした

なんとなく…

人差し指を指紋認証システムの上に
置くと静かにガラスのドアが開く

そのまま思うがままにエレベーターに乗り
最上階の一室へついた

こちらも指紋認証をし
部屋を開けると室内は白と黒を基調とした
綺麗な部屋だった

一つの大きなクローゼットを開けると
そこにはたくさんの刃物が置かれていた

もう一方には無地の服がズラリと
ならべられていた

「とりあえず風呂に入ろう…」

熱いシャワーを浴び
頭の中を整理するためもあったが
何より身体が冷えていた

しかし一体僕は何故
あんなところにいたのだろうか

何故身体に血が付いているのだろうか

少し前の記憶のはずなのに
いっこうに思い出せない

ただ…あの刃物を見る限り
僕は誰かに狙われている?

いや、誰かを狙っている存在だろう。

僕が目を探している、つまりそれは
誰かから目を奪うということなんだろう

「ふぅ…」

ふいにため息をつき
風呂場から出て下着だけ身につけると
ベッドになだれ込んだ

明日になればもう少し何かを
思いだしているかもしれない

そんな淡い期待を抱いて…。
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