luce angelo

□出会い
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天使育成係

「……はぁ。」
今日は12月24日、いわゆるクリスマスイブである。しかし青年、ブルーは1人で住むには広過ぎる自宅で頬杖をつき、ため息をついていた。親は物心つく前からいなかったし、たまに幼馴染みのグリーンが来るので寂しさは別にないが、なんとなくこの特別な日がいつもと変わらない1日であるというのが少し悲しく感じる。魔術も剣術も勉強もエリート街道まっしぐら、料理や洗濯などの家事もなんなくこなしておまけに人格も優れていたので、男性のみならず、女性からもとても人気があった。だがあいにく恋愛というものに興味を持ったことがなく、今まで多くの女性の告白を何度も申し訳なく断った。現在は大学への首席入学が決まり、ただただのんびりと休暇をとる日々が続いている。
そんな日々を、ブルーはつまらなく感じていた。何か、特別なことでも起こらないものか、と密かに願ってみる。今日はクリスマスイブなのだから、なんて1人で考えどうせそんなこと起こらないかと意気消沈する。落ち込んだ気持ちを紛らわす為に勉強でもしようと参考書を手に取ったとき、ふとインターホンが鳴った。こんな夜更けに一体何だと思いながら玄関の扉を開いた。
「はい。…?」
目の前には誰もおらず、代わりに足元に一通の手紙が置いてあった。不思議に思ったが、冬の夜は異様に寒いのでさっさと足元の手紙を取り、ガチャリと扉を閉める。その手紙は、まず外見からして不思議なものだった。ただの紙ではありえないほど触り心地が良い封筒に見たことがない金色の蝋で封がしてある。おまけにその蝋には、鳥の羽根をかたどったようなマークが入っている。とりあえず封筒の上部分をペーパーナイフで切り、中の手紙を取り出す。開くと、金色のインクで流れるように書かれた美しい字が目に入った。
『この度は、貴方に大変重要なお願いがあり、お手紙を書かせて戴きました。我らが住まう天使界にて、貴方の人柄と能力が大変優れ、信頼できるものと判断されましたので、天使の育成をお任せしたいと思います。詳しくは追い追いお知らせさせていただきます。 どうか、優秀な天使育成にご協力お願いします。
天使育成委員会』
…てん、し?手紙の8割以上の内容が理解できなかった。まずなぜ天使界から自分に手紙が届いているのか?そして天使を育成?しかも自分がその役割を担うことが半強制的に決まっている。この内容を理解することはたちの悪い問題集を解いたり、古代の資料から魔法を読み解くより難しいかもしれない。とりあえず落ち着け、自分よ。つねっても痛いがきっと夢だ。リアルすぎる夢に違いない。そう言い聞かせながら風呂へ入って、しばし風呂上がりの読書タイムを過ごす。眠気を感じ、今日はもう休もうと寝室へ行き部屋の明かりを灯す。音に少し遅れて淡い光が部屋を照らす。その明かりは信じられない光景を照らし出した。
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