amante

□愛の形容
1ページ/1ページ

※ちょっと自傷行為をほのめかす描写多めなので注意

ぷつ、と皮膚が裂ける音。同時に、紅い粒がもりあがりやがて一筋の線となって流れ落ちていく。その姿が、自分の白い肌と酷く対象的で目を奪われる。何度目かはとうに忘れた。自分でも意識しないうちに自らに刃をあて、傷つける。日課のようになってしまったそれは、痛々しい跡をくっきりと残している。自分を痛めつけるのが好きなわけではない。ただ、こうして自分の命を少しずつでも削っていけば、いずれかはこの世界に必要のない自分という存在を消し去ることができるのではないか、と心のどこかで期待しているのだ。俺の存在意義。俺の居場所。俺の、仲間。愛し愛してくれる人。よぎる様々なものが全て塗り固められた嘘だとしたら…
"おれはなんのためにいきているの…?W
自分の思いが、心の叫びが刃物に変わる。偽善に絆され踊らされる自分を戒めるために、いつ"それ"が目の前で消え去ったとしても耐えられるように。今日もまた、今日もまた……

痛々しい腕の跡。美しい肌にひときわ目立つ蚯蚓腫れ。それは彼の抱える不安の形容。心の叫び。守らなくては。引き返すことのできないところへ行ってしまう前に。
(…変えてみせる、あいつに見える世界を。)

それは愛を知ってしまったせい

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ