amante

□早く、気付いて
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早く、気付いて

「俺さ、好きな人できたかもしれないんだよ。」
「……へぇ。」
素っ気ない態度で受け流したように装ったが、心の中はひどく揺らいだ。当たり前だろ、そんなこと。人は誰だって恋をするんだから。でも、一体どんな人物なんだろう、どれほど愛していて相手はブルーのことを愛しているのか…そんなことが頭の中を掻き回した。
「相手は…そのお前が好きになったのはどんな奴なんだ…?」
変に思われないよう、ただ純粋に相談に乗るようにして問うて見る。
「んー…そうだな。金髪でさ、太陽の光が当たると輝いてすごく綺麗なんだ。」
ハイラル人なんてほとんど金髪じゃないか、と言うとははっと笑っう。こっちの気持ちも知らないで。
「でもさ、それがなかなか一筋縄ではいかないやつでさ。俺のこと好きなのかもよくわかんないんだよなぁ…もしかしたら嫌われてるのかもな。」苦笑しながら俯く彼をみてぎり、と心を締め付けられるような苦しみを感じた。なんでそんなやつを好きになったんだよ、せめてお前を心から愛しているやつだったら見切りもつけられただろうに…
たぶん、俺はブルーのこと、好きなのかもしれない。自覚したことでもっと辛くなった。
「…そんなやつ」
「…?」
「そんなやつ、選ばなきゃいいのに。お前のこと好きな奴なんかそいつ以外にもいるだろ。」
「…でもな。諦められないんだよ。勇者が、途中で諦めるなんてみっともないだろ?それに俺の思いは揺るがない。」
真っ直ぐに見つめる瞳に、濁りはひとつも存在しない。
「…そう、なのか。」
油断すると零れ落ちてしまいそうなほど溜まった涙を悟られないように、背を向けブルーの元を立ち去った。きっとこの先この思いが届くことはないだろう。完全にブルーから離れて1人になった時、瞳からとめどなく涙がこぼれ落ちた。






「…やっぱりダメか。」
遠回し作戦は失敗だったようだ。あいつは意外と鈍感なのだ。それを知っているのもあいつのことを、ヴィオをいつも無意識のうちに目で追っていたから、見つめていたから。
「神様もひどいもんだよな、全く…」
この思い、どうしてくれようか。もうそろそろ抑えることができそうにない。



あぁ、届くことのないこのおもいに

抑えきれないこの思いに


((早く、気づいて…))
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