story 2

□【バースデー記念】いつの日か
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一年に一度、シリウス号のキッチンが戦場と化す日がある


キッチンの主以外が集まって


慣れない作業に悪戦苦闘


今年もその日がやって来た









「…おい、お前ちゃんと見とけよ」


「ん?うんわかった」


ナギは朝からそわそわ心配顔


今日だけは自分の城のキッチンに入れない


「じゃあ行ってくるね、今日一日はゆっくりして?」


「ああ…」


とはいうもののナギはどこか落ち着かなげ


そうだよね


いつも忙しく働いてる時間に何もするなって言われても


ナギの性分だもん、困っちゃうよね


でも今日だけは、言うこと聞いてもらいますからね?


「行ってきま〜す」


居心地悪そうなナギを残して


私はキッチンへと向かった








ココアが出て行った部屋に俺は一人残された


眠ってるココアを残して一人キッチンへ行くことはあっても


俺が一人残されることなんてめったにありゃしねえ


…すげえ居心地悪ぃ


今日一日はゆっくりしてくれと言われても


…俺一人でどうすりゃいいんだ


でけえ部屋じゃねえんだけど


ココアがいねえとなんつーか…がらんとして味気ねえ


キッチンの様子が気になるが


行ってもどうせ寄ってたかって邪魔者扱い


レシピ集でも見てみるか…


分厚目の1冊を手に取りベッドに寝そべりパラパラとページをめくってみるが








あー、静かすぎて集中できねえ


一人には慣れっこだったはずが


静かすぎるとか


おかしいだろ


波の音がやけに耳につく


あいつらと一緒に旅するようになって


最初はうるせえと思った


そしてココアがこの船に転がり込んできて


俺の部屋を選んで


厄介なものを背負いこんだと思った


それがどういうわけか好きになって


側にあいつがいるのが当たり前になって


今じゃいねえと落ち着かねえ


自分の変わりように笑っちまう


しょうがねえ


甲板で風にでも当たるか…


俺はベッドから起き上がり


部屋を出て、一人甲板へと向かった










ナギが一人甲板で静かに時を過ごしている頃


キッチンは大騒ぎだった


味見と称してつまみ食いばかりするハヤテさんに注意して


飽きたと言ってすぐに部屋に戻ろうとするシンさんをなだめすかして


体にいいとか言って薬草を料理に入れようとするソウシさんにやめて下さいとお願いして


その横で朝からお酒を飲んで一足早くお祝いだ!なんて言ってる船長からお酒を取り上げて


私は目の回る忙しさだった


ただ一人、頼りにできるトワ君と困ったねと笑いあって


なんとかナギの誕生日をお祝いする料理を完成させた











みんな口々に勝手なことばかり言ってるけど


それでも思いは只一つ


ナギの誕生日をお祝いしたい


その思いがあるからこそ


こうしてみんな集まって


苦手なことにも挑戦してくれている


料理人のナギをお祝いするのだから


この日だけは他のみんなで料理を作ろう


船長の提案に異議を唱える者は誰一人いなかった


それ以来ナギの誕生日はナギ以外で料理を準備するのがシリウス号の習慣になっていた








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