story 2

□貴方に酔って
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「お〜!すげえっ!」


ハヤテさんが前方に見えてきた満開の桜並木に向かって走りだした


「トワ!もたもたしてんじゃねーよ!」


「あ!待ってくださいよ〜」


ハヤテさんの後をトワ君が両手にたくさんの荷物を持って追いかける


「ふふっ…兄弟みたい」


「…ったくハヤテのやつ、何も持たねえで行きやがって」


ポカポカと春の日差しが降り注ぐお花見日和


ナギと私は一団の最後尾を二人並んでゆっくりと歩いていた






ヤマトの中でも桜の名所として有名なこの街に


シリウス団一行は春の恒例行事となったお花見のためにやってきた


ヤマト出身とはいうものの


ここを訪れるのは初めてで


噂に聞いていた桜のトンネルをナギと歩けると思ってワクワクしていた


季節はちょうど満開の時期


辺りはお花見を楽しむ人たちでいっぱいだった







「…すげえ人だな」


「ね〜。でも桜綺麗だもんね〜みんな見たいよね」


ヤマト人にとって桜の花は特別だ


蕾が膨らんだ


花が咲き始めた


五分咲きだ


この季節が来るとあいさつ代わりに桜のことを話題にする


そして満開の桜を見ると


まっさらな気持ちになって頑張ろうって気持ちになる


「ほら…手」


「うん…」


差し出された大きな手にそっと手を重ねると


しっかりと手を握り合って


私たちは桜のトンネルの下をゆっくりと歩いた


私より背がずっと高くて脚も長いナギが


私のペースに合わせて今日はゆっくりと歩いてくれる


みんなから少し遅れてついて行く、それってわざと…だよね?


私たちにとっては二人きりの時間なんだよね?


ちょっとだけデート気分を楽しんで


私たちは一本の大きな桜の木の下に陣取った








ナギが早起きして作ったお花見弁当はもちろん大好評


お弁当の美味しさもあってお酒もすすむ


みんなよく食べよく飲んで


桜ちゃんと見てるのかな?


なんて思っちゃう


でもみんなの楽しそうな顔を見ていると


…ま、いっか


見上げると桜の花が午後の日差しを浴びて白く輝いていた


「…お前も食えよ」


「あ!うん!」


桜に見惚れていた私は


ナギの声で我に返り


「いただきま〜す!」


大好きな大好きなナギのだし巻き卵をほおばった









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