過去拍手SS

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もしシリウス号がヤマトに来なければ


私とナギは出会わなかった


もし酒場が荒らされなかったら


もし私があの酒場で働いてなかったら


もし樽に逃げ込まなかったら…


私の「もし」は延々と続く


もしナギがシリウス海賊団に入っていなければ


もし船長と出会っていなければ


もし船長がナギを助けていなければ…


私たちが出会えたのは本当にたくさんの偶然が重なったから


どれか一つが欠けても出会えなかったのだろう


でもこれはみんな偶然なのか


それとも私たちはこうして出会う運命だったのか


そして私がナギの部屋を選んでなかったら


ナギを好きになることもなく


ナギとこうなることもなかったのだろうか


でも私たちは出会ってしまって


惹かれあい


結ばれた


今更こんなこと考えても意味はないし


ナギのいない人生なんて考えられないけど


私の横で静かに寝息を立てて眠るナギの寝顔を見ていると


ナギと出会えて本当によかったと改めて思う


ナギに抱かれて眠りにつき


ナギの腕の中で朝を迎える


ナギと出会って、ナギを好きになって


人を愛することの苦しみ、喜びを知り


人に愛されることの幸せを教えてもらった


もしナギがいなかったら…


そんなこと考えられないし考えたくもない


だって今目の前には幸せそうに眠るナギがいるのだから


ナギ、大好きだよ


出会ってくれてありがとう


ナギの胸に子猫のように額を摺り寄せ


堅い胸板にそっとキスを落とす


眠っていたはずのナギの腕に力が入り


私の体はナギの体にぴったりと抱き寄せられる


「起こしちゃったね…」


「…どうした?眠れねえのか?」


「…ううん、ちょっと考え事してただけ」


「…なんだよ、考え事って」


途端にナギの声が心配の色を帯びる


「ん?…ナギと出会えてよかったって」


「…それだけか?」


「うん」


「…ならもう寝ろ」


ナギが背中をトントンとしてくれる


その心地よいリズムと安心感で


もしナギがいなかったらなんて考えていたことすらバカみたいに思えてくる


それが偶然か必然かなんてどうでもよくなり


今ここにある幸せに身を委ねる


ナギの温もりを感じながら微睡み薄れる意識の中で私は思う


ナギ、私たちの未来は一つだよね


ずっとずっと一緒に…


深い眠りに落ちる中


怖いくらいの幸せに


ナギにギュッとしがみついた







end










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