図書館戦争アナザー

□アナザーone
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「実際のところどうなの彼女」
「化け物だな。男子を混ぜたハイポートで12位に入りやがった。自衛隊に突っ込んでも訓練ならついていけるんじゃないか」

まだ怒り覚めやらぬ様子の堂上が思いの外公正な判断を下したのが意外でもありまた面白くもあり、小牧はクックッと喉で笑った。

「そっちはどうなんだ」
「彼女も規格外だね。今からでも最前線で十分活躍できると思うよ。そうやって生活してきたんだから当たり前かもしれないけど」

御堂奈緒の入隊に当たって関東図書基地はにわかに色めき立った。

本人が防衛部志願ということもあり配属先はすんなりと決まったが独身寮での部屋の割り当てから防衛部の教育課程での班割に至るまで、武装テロリスト集団の構成員の1人だったこともさることながら関東図書基地司令稲嶺和市の養子という奈緒にぶら下がる身分に上層部が頭を抱えてしまったからである。

結局寮の部屋に関しては空きのある2人部屋を1人で使わせるに落ち着き、教官には温厚で人当たりがいい小牧が適任ということになった。

知らずに過ごすにはあまりに有名な御堂奈緒の指導役に選ばれた小牧はどうしたものかと考えあぐねていたのだが、入隊式の日に名前を呼ばれ会場の注目をすべて背負った奈緒は想像していたそれとは違いごく普通の女の子だった。
普通というには憚られる容姿ではあったが、それは何処ぞに置いた上での話である。

入隊から数ヶ月が経過し小牧はその間も奈緒の言動を気にかけてはいたがやはり卓越した戦闘技術の他には他の女子隊員と比べても小牧の普通の女の子という評価を覆すような点は見当たらなかった。
むしろ事あるごとに堂上に噛み付く笠原の方が周りに問題児という印象を与えるようになってきた程である。

「想像すらできないような環境で育ってよくひねくれずに育ったなって感心しちゃうよ。なんにせよ、こっちの可愛い教え子は例の話決定だろうね」
「…またお前はそういう単語をいけしゃしゃあと」

堂上が批判めいた視線を送ってよこしたのは小牧がさらっと口にした可愛いという言葉のせいだろう。
堂上と小牧は同期であり良き友人でもあるが堂上は小牧のこういう所は苦手としている。
そして女性に対して『化け物』とするか『規格外』とするかのこの2人の違いがそのまま女子隊員からの人気の差に繋がっていることを堂上はまだ知らない。

「それに防衛部長よりはうちの隊長の方がいろんな意味で御堂さんをうまく使えるだろうしね」
「ああ、それはそうだろうな」

堂上は自分の上官でもある豪快なおっさんの顔を思い浮かべて苦笑した。
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