図書館戦争アナザー

□不意打ちのリベレイション
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「それはまた、強引な人ねぇ。さすがは玄田隊長のオトモダチだわ」

柴崎が呆れたように言う。

「まぁね…でもいってることは間違ってないからさ。正論過ぎて何も言い返せなかった」

ふーん、と興味無さげな柴崎が明日のフォーラムのプログラムに目を走らせる。

「それで傷ついちゃったわけ?慰めて欲しいんなら慰めてあげるけど?」
「いや、いい」

柴崎も折口に劣らず辛辣だ。

「正直よくわかんない。私傷ついてんのかな?」
「あたしに聞かれても分からないわよそんなこと」

言い捨てる柴崎に取りつく島もないとはこのことか、と苦笑する。

折口の言葉は衝撃だった。だから動揺もした。
でも傷ついたのかと聞かれると違う気もする。
あんな風に堂々と奈緒の過去に言及してきた人は初めてだ。
そう、どちらかと言えばそれは。

「結構、嬉しかったかもしれない」

呟くと柴崎は顔を顰める。

「M属性だとは知らなかったわ」
「え、今そんな話してたっけ?」

悪戯っ子の顔で笑う柴崎に抗弁しようとすると風呂上がりの笠原が上がりこんできた。
ノックがなかったことにはもう突っ込む気もない。

「ちょっと笠原髪くらい拭きなさいよ」
「ほっといてもそのうち乾くっしょー」

柴崎の小言もどこ吹く風の笠原が言いつつ冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
勝手知ったるなんとやらだ。

「そういえばさ」
「んー?」
「柴崎と笠原って何で私と友達やってんの?」

ふと思ったことを聞いてみる。
普段は絶対口にしない台詞を吐いたのは、傷ついてないとはいいつつ少し心がささくれてた所為だろう。

一瞬の沈黙の後、柴崎の平手打ちが飛んできた。

「いっ」

続いて飛んできた鉄拳は笠原だ。

「痛い、マジで痛い」
「人をバカにするからでしょ。甘んじて受けなさい」
「別にバカには…」

反駁すると笠原にもう一度本気のゲンコツを落とされた。

「あんた…まさか私たちもあんたのこと見下してるとか思ってる!?」

見上げた笠原は真っ赤で、目には涙が溜まっている。

「そんなチープな感情で動く女だと思われてたなんて甚だ心外だわ。あたしはね、自分で見たものしか信じないのよ」

ぷいっとそっぽを向いた柴崎の顔はあきらかに拗ねていた。

ああ、だからこいつらには叶わない。

「…ごめん。ちょっと見くびってた。柴崎は裏表激しいしけど根はまっすぐだし、笠原はそもそも単純すぎて裏の顔なんか持てるわけないもんね」
「ちょっと、それ謝ってないから。絶対謝ってないから!」

だがら大好きなんだ。
それは恥ずかし過ぎて、口には出せないけど。
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